リーン方式が教育現場に――教室から外へ出ましょう

ブランク氏のリーン・ローンチパッドがさらに拡大を続けています。今度は、STEM(サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、数学)の教育者が対象。革新的な境域手法をリーン・ローンチパッド方式を使って磨き、広めようという試みとなります。開講は2015年からですが、教育界でどのような改革が進むのか注目です。(ITpro)

 全米科学財団(NSF)は7月下旬、教育現場のイノベーションをより広めたい教育者に対して120万米ドル(約1億2000万円)を提供し、リーン・ローンチパッド方式を教育分野で推進することにしました。

 NSFが私のリーン・ローンチパッド・クラスを採用して、イノベーション部隊(I-Corps)プログラムが始まりました。その目標は、大学の科学者と研究員がリーン・ローンチパッド手法(ビジネスモデル・デザイン、顧客開発、アジャイル・エンジニアリング)を使って、自分たちの科学研究の成果の商用化を鍛えることでした。

 2014年の7月初めに、全米国立衛生研究所(NIH)は、 医療分野の研究をしている科学者が、研究所でのイノベーションを患者のいる病室に移す、トランスレーショナル医療の加速を支援するため、I-Corps@NIHを発表しました。

 そして7月下旬、NSFは次のI-Corpsプログラムとして「学習のためのI-Corps」(I-Corps L)を発表しました。今回のI-Corpsは、幼稚園から大学院までSTEM(サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、数学)の教育者で、革新的な教育戦略や教育手法、教育資料を、より広範囲な聴視者に提供する方法を学びたい人たちのためのものです。パイロット・プラグラムの成功に基づき、NSFは「学習のためのI-Corps」クラスの24チームに、120万ドルの資金を支援します。

教室における課題

 教育者と教育政策担当者に共通するフラストレーションは、斬新かつ革新的な教育手法が、多くの学生に影響を与えられる教室という場において、広範に採用されるのが非常に難しいことです。連邦政府と教育関連企業がSTEM教育研究に多額の資金を投入しましたが、その中のいくつかの果敢な新しいアイデアも、失望せざるを得ないほどごく一部でしか、実用化されませんでした。これら教室でのイノベーションは実質的には秘密にされ、STEM教育者と一般の教育研究社会にはほとんど知られていません。

 一般的に教育者は素晴らしい革新者ですが、彼らのアイデアが広範に採用されるのに苦戦しています。ということは、教室でのイノベーションの普及は非常にゆっくりとしたものだったのです。この速度を上げる方法はあるのでしょうか。

 1年前、以前はSTEM教育者だったNSFのドン・ミラード氏が、この問題を解決するかもしれない仮説を基に、私に接触してきました。革新的なアイデアを持っている教育者が積極的に教室から外に出て、他の教育者/教育機関/学生と一緒にそのアイデアを検証した場合、そのアイデアの採用率がかなり良いということを、彼は目にしていたのです。

 これまでは、自分たちの新しい考え方を広めることに成功した教育者の技能を、 反復させる標準的な方法はありませんでした。ドンの洞察は、科学者向けに考案された標準的なI-Corpsモデルが、教育者/先生にもうまく適応させられるかもしれないとのことだったのです。ドンは、科学者が発見した製品を市場に提供する試みと、教育者が革新的な学習方法を広めることには、多くの類似点があると指摘しました。ドンは、標準的なリーン・ローンチパッド/I-Corps手法が、教育者の教室でのイノベーションをどのように利用し、いかにして他の教育者と教育機関がそれを採用し、将来的な投資家にその価値をどうやって正確に伝えるか、など、教育者が理解するのに打ってつけの方法だと考えたのです。