今回の投稿では、大企業が革新的でいられない例としてインテルを取り上げています。既存商品との競合を避けることでインテルが逃した省電力プロセッサー市場は、ソフトバンクが買収することになった英ARMが得意とする領域です。(ITpro)

 21世紀は、大企業による破壊的な新発見が難しい時代です。破壊的な新発見は、スタートアップ企業から現れます。自動車ではTesla、タクシーではUber、ホテルではAirbnb、ビデオレンタルではNetflix、メディアではFacebookです。

 大企業を押しとどめているのは、何でしょうか。理由は4個あります。

 第1に、株主への価値を最大化する、すなわち「株価を高くするのが企業の存在理由である」という、誤った前提に賛同していることです。その結果、大企業は業績を評価するために、純資産利益率(RONA)や資本金収益率、内部収益率(IRR)などで事業の効率を測るようになりました。

 長期的なイノベーションに投資をしたい企業にとって、これらの評価基準は難題となります。これらの評価基準を良く見せるには、全ての事項を外注し、貸借対照表から資産を削除し、素早く清算できる事項だけに投資するのが有効です。そうするため、企業は社内の研究開発機関を廃止し、製造を外注し、長期的な投資をなくします。この結果でもたらされたビジネスモデルは、信じられないほど収益が上がっているように見えます。

 第2に、これらの企業の経営最高幹部は、財務、サプライチェーン、製造に長けている傾向があります。彼らは現行のビジネスモデルを、どのように執行すれば良いかを知っています。

 インテルの直近のCEO2人は、それまでのCEO以上の売り上げと利益を計上しました。より高価なチップの製造に向けた研究開発のため、記録的な投資をしたことは指摘できますが、今日においてインテルが主導した時代は終わったことは明白です。なぜでしょうか。

 過去10年間、インテルは2つの重要な破壊的なトレンドを見逃しました。最初は、デスクトップ・コンピュータからモバイル機器への移行で、多量の電力を必要とするインテルのx86プロセッサーは、そのトレンドに適していませんでした。競合のARMは、より性能が良く、ずっと省電力のプロセッサーを持っていただけでなく、より良いビジネスモデルを持っていました。