大企業におけるR&D(研究開発)がテーマの連載第3回となります。今回は、企業が「イノベーション前哨地」を作る際に検討すべきことを6項目にまとめています。(ITpro)

 このブログは、エバンジェロス・シモウデス氏と共同執筆している、大企業のイノベーションモデルの変化に関する連載の第3弾です。シモウデス氏と私は、大企業での新規事業に向けた新しいモデルが書籍になることを期待して、協力し合っています。第1回の「イノベーション前哨地と進化する大企業のR&D」、第2回の「シリコンバレーでのイノベーション前哨地――活動の中心地へ」も、どうぞご参照ください。

イノベーション前哨地を決める、企業幹部のプロセス

 現在、大企業は、シリコンバレーのようなイノベーション・クラスターに、イノベーション前哨地を設置し、クラスターのイノベーション・エコシステムを利用しています。

 これらの企業のイノベーション前哨地は、シリコンバレーの新しい革新的な技術、または生まれつつある脅威や破壊のツールになるかもしれない企業を絶えず監視し、そして、これらのイノベーションを利用して新しい製品を作ったり、スタートアップ企業に投資したりしています。

 ほとんどのCEO(最高経営責任者)は、イノベーション前哨地の設置と運営管理、またスタートアップ企業との関係づくりを、研究開発部門に任せます。経営幹部間の軋轢を避けることはできますが、イノベーション前哨地の決定においては誤った方法です。

 そうではなく、CEOと経営幹部は、イノベーション前哨地を設置すべきか、それはシリコンバレーもしくはそれ以外のイノベーション・エコシステムか、といった総括的な議論から始めるべきなのです。これは、広範な経営幹部の賛同を必要とする重要な決定なので、この討議には上級幹部、特にデジタル担当役員、戦略担当役員、財務担当役員と研究開発担当役員が参加し、加えて取締役会も参加すべきかもしれません。

 自分たちの企業にとってイノベーション前哨地が有用かどうか、そしてどこに設置すべきかを理解するため、役員たちは以下の6つの重要な問いを、注意深く検討する必要があります。

1.「スタートアップ企業発」のイノベーション(社外にある初期段階の企業との関係で開発されたイノベーション)が、自社のイノベーション・ポートフォリオの一部であるべきだと思うか?

 企業のポートフォリオに、スタートアップ企業発のイノベーションを取り込むのが有用なのは、企業が、以下のような状況にある場合かもしれません。

・多くのIT、出版、小売り、通信などの企業に起こっているように、今、企業が破壊されている
・自動車や化学工業の産業に起こっているように、近い将来、企業が破壊されると予測されている
・医薬品、金融サービス、消費者向けパッケージ商品の産業に起こっているように、企業が属している産業分野でのイノベーションのペースに追従できない
・Google、Amazon、Facebookが行なっているように、その企業のビジネスモデルを拡張し、創造的な従業員を保持するために、企業内の起業スピリットを奨励したい