前回に引き続き、ライフサイエンス/ヘルスケア分野の事業化の話題です。この分野でユニークな取り組みを推進しているシカゴのMATTERの事例を紹介しています。(ITpro)

 ライフサイエンスとヘルスケアの技術を、どうやって存続能力がある企業にするかという展望は、この3年間で、過去30年間とは比べものにならないほど変わりました。トランスレーショナル医療に対処する、新しい手法が考案されたのです。私たちのライフサイエンス用のリーン・ローンチパッドはその手法の1つです(関連記事:NIH版I-Corps:根拠に基づくトランスレーショナル医療)。加えて、ライフサイエンス/ヘルスケアの共同作業協力空間の新しいクラスもその一つです。

 米国立衛生研究所(NIH)は、ライフサイエンス/ヘルスケアを商業化するには、2つの構成要素が必要だと認識しています。それは、科学技術とビジネスモデルです。ライフサイエンス用のリーン・ローンチパッド(I-Corps@NIH)は、リーン・スタートアップ・モデルを使って、ビジネスモデルを発見し検証しています。

 そのクラスでは、ライフサイエンス/ヘルスケアの起業家に対して、どのように実社会で迅速に実行するかを教えています。

技術を商用化する過程では、往々にして科学や技術だけに焦点をあてがちですが、成功するにはビジネスモデルの構築努力も必要です。I-Corp@NIHでは、ビジネスモデル開発を支援します
技術を商用化する過程では、往々にして科学や技術だけに焦点をあてがちですが、成功するにはビジネスモデルの構築努力も必要です。I-Corp@NIHでは、ビジネスモデル開発を支援します
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・数百万米ドルもの資金を使う前に、臨床的有用性を定義します
・中核の顧客とそれ以外の顧客、そして当初の臨床医への販売とその後の商業化に必要な、販売とマーケティングのプロセスを理解します
・製品をデザインし作成する前に、知的財産と規制リスクを評価します
・将来のパートナーシップ/共同作業/購入に必要とされるデータを、科学を始める前に把握します
・資金調達が必要になる前に、その方法を見いだします

 ユーザー/顧客を中心とした、このアプローチは、ライフサイエンス/ヘルスケアの商業化にとって、正しい道筋に進む大きな第一歩です。しかしながら、医療機器/ヘルスケア分野で、顧客発見を実行するときのボトルネックの1つは、最少機能で実現可能な製品(MVP)が、状況に応じて機能するのを検証することです。医師、患者、購入者、医療供給者、購入部門と戦略的なパートナーなどの全てと共に、仮説を検証するのは困難です。それを遂行するには、何百マイルにもおよぶ旅、何カ月もの時間、そして多く資金が必要です。手術室で、外科医の肩越しに手術を観察する時間を調整するのも、非常に困難です。そして治験中に、購入者や専門家とブレーンストーミングをする時間をとるのも、難しいことです。

 これらの仮説とMVPを、ある実際の場所で最初に検証できれば最高でしょう。そしてその最初の検証が行なわれた後に、それ以外の場所でも他の人たちの同意が得られるかどうかを試すのです。