B2Bのマーケティング担当者にとって、受注確度の高い見込み顧客を見極めて、「リード」として営業に渡し、売り上げ向上に貢献することは最も重要なミッションだ。一方で、「受注確度の高い見込み顧客とは?」という問いに明確に答えることは難しい。今回は受注確度を定量的に測る「リードのスコアリング」について考えてみよう。

リードスコアリングとは何か

 リードスコアリングとは、顧客のプロファイル(属性)やエンゲージメント(接触履歴)といった情報を手がかりに、リードを定量的に評価する仕組みを指す。欧米ではプロファイルやエンゲージメントが受注確度に影響する変数であることは様々な業界で検証済みだ。しかし、エクセルやSFA(営業支援)システムを使って、手動でスコアリングしていくことは簡単ではない。

 そこで、リードスコアリングを実現するツールとして、マーケティングオートメーション(MA)の役割が重要になってくる。

 ここで、顧客のプロファイルとエンゲージメントについて、簡単に解説しておきたい。プロファイルとは、リードの企業規模や業種、売上高、所在地といった属性情報を指す。

 エンゲージメントとは、自社とのあらゆる接触履歴であり、リードと自社とのつながりを可視化するものだ。主要なMAツールは、セミナー・展示会への申し込みや参加の有無、自社サイトへの流入経路やアクセス履歴、ホワイトペーパーのダウンロード状況、電子メールの開封・クリックスルー履歴、広告反応履歴などを時系列で把握する機能を備えている。

 MAツールのリードスコアリング機能は、プロファイルとエンゲージメントの2軸を掛け合わせて、スコアリングモデルを策定し、リードごとにスコアを自動的に算出する。こうしたリードスコアを基に、「今、最も受注確度の高いリード」を特定し、一定のスコアを超えたリストだけを営業に渡すという具合だ。

 ではMAツールを導入すれば、すぐに受注確度の高い見込み顧客は見つかるかというと、残念ながらそうではない。ツールを導入する前に、受注確度の高い見込み顧客はどのようなプロファイルを持って、どのようなプロセスで創出される確度が高いかという「勝ちパターン」の仮説を作っておく必要がある。

 これはマーケティング担当者がデータをこねくり回すだけではなかなか見えてこない。マーケティングや営業の実績データを基に、営業担当者との議論を通じて見えてくるものだ。

 例えば、SFAシステムで管理する直近1年の実績データを基に、受注(もしくは商談機会の獲得)に至った顧客とそうでない顧客のプロファイルを比較し、営業担当者との議論を通じて、受注に至りそうな見込み顧客の「プロファイルの傾向」を導き出す。同じように、受注に至った顧客とそうでない顧客のマーケティングや営業活動による接触プロセスが記録されていれば、「エンゲージメントの傾向」が分かるはずだ。

 もちろん手元にあるデータの量と質によって、推測できる精度に違いが出る。精度の高い膨大なデータがあるなら、データマイニングで導き出すことも可能かもしれないが、そんな会社は多くないはずだ。データが限られているなら、担当者の知識や経験に基づき、傾向を出す形で差し支えない。仮説さえあれば、ツールを活用して検証し、その精度を継続的に高めていくことができるからだ。