音楽産業が衰退している。音楽配信がCDからiTunesのようなデジタルに変わり、今ではSpotifyなどストリーミングが主流となった。これに伴って、業界全体の売上金額が大きく減少した。音楽制作もIT化が進み、コンピュータに楽譜を入力して音を創る。出来上がった音楽は、フォトショップで修正するように、いかようにも手を加えることができる。主としてコスト削減が目的であるが、The Beatlesのような歴史に残る名作も生まれない。

 このような中で、人工知能が音楽特性を正確に把握できることが分かった。この研究結果が業界に衝撃を与えている。人工知能が音楽業界再生の切り札となるのか、様々な試みがなされている。

Convolutional Neural Networkで音楽特性を把握

 音楽のような二次元データは、人工知能が得意とする分野である。しかし、新しい可能性を求めて多くの研究者が挑んできたが、目立った成果はあがっていない。ところが、Deep Learningの技法である「Convolutional Neural Network」(CNN、特徴量を高精度で把握するセンサー)を音楽に適用することで、飛躍的な進展があった。

出典: Sander Dielemanほか
出典: Sander Dielemanほか
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 この技法は、ベルギーの大学「Ghent University」のSander Dielemanらが、学術論文「Deep content-based music recommendation」として発表した。人工知能の手法で音楽の特性を把握し、推奨精度を大幅に向上できるという内容である。

 現在は「Collaborative Filtering」という方式で、音楽や書籍を推奨するのが一般的。Amazonで買い物をすると、○○を購入した人はXXを購入していると表示されるが、これがCollaborative Filteringで、購入パターンが類似している消費者を比較して商品を推奨する方式である。Amazonはこの方式で大きな成果を上げてきたが、リリースされたばかりの商品や、人気のない商品には適用できないという問題を含んでいる。推奨できるまでには、購買データを集めるなど下準備に時間がかかる。