この極言暴論では、ユーザー企業のIT部門やIT業界の問題点をいろいろと書いてきたが、そうした様々な問題の根っこはたった一つである。その根っことは「日本は解雇規制が厳しく正社員を容易には解雇できない」ということだ。逆に言えば、IT部門やIT業界の問題は、正社員の解雇が容易になれば大概は片付く、ということになる。

 実は、日本において技術者の流動化が進まないことが、IT部門やIT業界に様々な歪みをもたらしていることは、折に触れて何度か書いてきた。ただ、解雇規制の話にまで論を展開したことはない。下手に書けば、IT業界にも多数存在するブラック企業を喜ばせるだけの暴論になってしまうし、この雇用の問題は当然のことながら、ITの領域だけにとどまる話ではないからだ。

 だが、必要とされる人員数が大きく変動するIT分野の仕事は、人材の流動化が阻害されていることの影響を最もクリティカルに受ける。その結果、極めて優秀な技術者が付加価値の低い低賃金の仕事に長期間にわたり塩漬けにされ、数多くの技術者がIT業界の多重下請け構造の中に組み込まれて、“景気変動の調節弁”にさせられてしまった。

 さらに日本の競争力にも影を落とす。ユーザー企業の多くは、IT投資の果実を手に入れられないでいる。本来IT投資により業務の効率化を図るはずが、逆に非効率をシステムで固定してしまい、グローバル競争で劣後するという深刻な結果を招いている。またIT業界も「ハイテク産業」の看板とは程遠い人月商売の労働集約産業となり、グローバルでの競争力は絶無に近い状況だ。

 そんなわけなので、もはや人材流動化の問題、解雇規制の問題をスルーしていてはダメである。私も今回はこのテーマを正面から“暴論”することにする。まずはユーザー企業とIT業界で、現状においてどのような歪みが生じているのかを述べる。この極言暴論で何度か書いてきたことと重なるので、できるだけ簡潔に記すことにする。