以前、記者の眼で「5年もすればSIはビジネスとして成り立たなくなる」という趣旨の記事を書いたものだから、今でもIT業界の人から「SIが無くなることはあり得ないよ」とよく言われる(関連記事: SIerの余命は5年、オオカミは本当にやって来る)。わざわざ記者会見中に言及して、「SIが無くなるという記事がありますが、そんなことはあり得ません」と話すITベンダーもいたほどだ。

 私としては、あの記事でSI衰亡について言い尽くしたつもりなので、いちいち反論する気は無かったが、なかには「SIが完全に無くなるわけがないでしょう」などと私の趣旨をあえて曲解して紹介し、“馬鹿げた説”と断罪されることもあった。いえいえ、そりゃ完全には無くなりませんよ。それでも一気に市場が縮小すれば、そこで商売をしているITベンダーは阿鼻叫喚状態となる。

 だから、「(多重下請けに連なるITベンダーも含め)SIerの余命は5年」なのである。実は、この手のレトリックは、市場が急速に縮小する悪い予感にさいなまれる人たちには格好の精神安定剤になるらしく、過去にも何度も似たような主張が繰り返された。いわく「メインフレームが完全に無くなるわけがない」。いわく「交換機が完全に無くなるわけがない」。確かにその通り。だけど、そこで商売をしていた人はどうなった?

 まあ、そんなわけで「SIが無くなることはあり得ない」という主張には、可能な限りスルーで対応していたのだが、最近「これは反論しておいたほうがよいな」と思う意見に出会った。「日本企業は欧米企業と全く異質の存在だから、SIも無くならない」。意見を言った人は、ある外資系のITベンダーの幹部で、それ以前もITベンダーではないが欧米の企業を渡り歩いた人だ。

 「欧米企業の経営は株主の利益を極大化するために、自ら組織を壊し自分の仕事を無くしてしまうのも厭わない。だからERP(統合基幹業務システム)の標準プロセスを採用することも苦にしない。一方、日本企業は自分たちの組織を守るために、非効率なシステムを導入し維持しようとする。だからSIerの仕事が無くなることはない」。一見、なかなかの鉄壁ロジックである。