もはや来るところまで来てしまった感があるな。何かと言うと、日本を代表するような大手製造業で法律違反や契約違反などの不正行為が相次いだ不祥事だ。どれも皆、長期にわたって現場で不正が行われ、経営者がそれに気付かなかったという点で共通する。実はこれ、一部の企業だけの問題ではなく、日本企業に共通する病の発露。例えばIT部門でも同じ構図で不正行為が常態化している。

 「ちょっと待て!我々は不正行為などしていないぞ」と怒り出すIT部門の関係者も多いと思う。お怒りはもっともである。だが、少しだけ怒りを鎮めて、読み進めていただきたい。そうすれば、製造業で露見した不正行為と全く同じ構図で、IT部門でも不正行為が平然と行われている実態に思い至ることだろう。ひょっとしたら怒り出した読者も、無自覚なまま不正行為に手を染めていたかもしれない。

 もちろん日本企業に共通する病と言う以上、製造現場やIT部門だけに限った話ではない。例えばサービス業の営業現場でも、これまた同じ構造で法律違反などの不正行為がはびこっており、悲惨な結果を招いたケースもある。ここまで書くと、既にピンと来た読者もいると思うが、順を追って説明する。そして結論としてはタイトル通り、日本企業の経営者がよく口にする「現場力」をNGワードにしてしまいたい。

 共通の構図とは、例えば次のような形だ。日本経済の大不振、いわゆる「失われた20年」の影響で、多くの日本企業は長期にわたるリストラモードとなった。経営者は「聖域なきコスト削減」などと全社に号令をかけ、各部門にキツイ目標を割り振った。「それじゃ現場が持たない」との声には、「今こそ現場力で何とかせよ」などとワケの分からない叱責を飛ばした。

 その結果、日本企業のそれぞれの現場は“現場力を発揮して”人員を減らしコストを削減し、経営者の期待に応えた。経営者はしみじみと思う。「やはり当社の強みは現場力だ」。一方で“少数精鋭”となった現場は疲弊する。ギリギリの人員やコストで業務を回しているから、業績が回復して仕事が増えれば、もう大変だ。それでも現場力を発揮して何とかしなければならない。で、現場力の発揮による不正行為も横行するようになる。