日本企業の大半の経営者は今、「経営課題は」と聞かれると、大企業や中堅中小といった経営規模にかかわりなく必ずイノベーションとグローバル化を挙げる。よほどのドメスティックカンパニーでもない限り、面白いほど皆同じ。この2点セットだ。従ってCIO(最高情報責任者)やIT部門の課題も「イノベーションに資するIT」と「グローバル化に資するIT」だ。

 この「極言暴論」の読者ならご存知だと思うが、私はイノベーションに資するITを巡るIT部門の喜悲劇とその問題点を散々書いてきた。イノベーションに資するITとは、新規ビジネスの創出や既存のビジネスの変革のためのIT、平たく言えば、今よりも上手く儲けるためのシステムのこと。多くの企業で、頼りにならぬIT部門を無視して事業部門が“シャドーIT”に勤しむ、あの世界だ。

 今や、このイノベーションに資するITの領域が企業のIT投資の主戦場。だから私も「このままではIT部門はマズイよ」「もう手遅れか」とあの手この手でIT部門などの読者を挑発してきた。そして、その“暴論”に賛同するか反発するかは別にして、読者も熱心に読んでくれた。

 それに対して、グローバル化に資するITに関する記事はほとんど書いていない。このグローバル化に資するITとは、M&A(合併・買収)した海外企業を含め、業務プロセスなどを標準化しERP(統合基幹業務システム)で統合し、グローバルでの経営の見える化に貢献しようというもの。極めて重要なのだが、私がこの「極言暴論」で最後に正面から取り上げたのは1年以上前のことだ(関連記事: IT部門の権限を海外に移せ)。

 なぜこんなに書いていないかというと、そうした記事に対する需要が少ないからだ。身も蓋もなく言えば、記事が読まれない。アクセス数が少ないのである。ただ、情報ニーズが無いからといって、伝えるべきことを書かないのはジャーナリストとして情けないこと限りなしだ。ここは心を入れ替えて、グローバル化に資するITの点でもIT部門が崖っぷちにあることを読者にお伝えしよう。