いやぁ、酷いものだ。プロジェクト管理がこれほどズサンだったとは、思いも寄らなかった。もちろんITベンダーの話ではなく、建設業界の一連の騒動のことだ。横浜市のマンションが傾いた問題で、くい打ちを担当した旭化成建材のデータ改ざんが発覚。しかも、他社でも同様のデータ改ざんが明らかになった。もう呆れ、驚くしかない。

 「本当に驚いた。我々の業界なら、元請けのSIerはあんなことを言わない。自らの責任とお詫びして、賠償するのが筋」。最近、SIerの人と会うと必ずこの話になるが、皆一様に驚いているのは、傾いたマンションを建てた元請けの副社長が記者会見で「申し合わせの通りやってくれると思ったが裏切られた」と発言したことだ。確かに、SIerがプロジェクトに失敗して、そんな発言をすれば袋叩きだ。

 それはともかく、まずはIT業界、特にSIerの皆さんにお詫びする。私は以前、「IT業界のプロジェクト管理は、建設業界のそれに比べると全くなっていない」と何度か言ったことがある。建設業界のこのザマを見ると、SIerのプロジェクト管理は建設会社よりもはるかに素晴らしいと言わざるを得ない。専門ではない業界と比較して、エラそうに言ってはいけないと痛感する。

 ただSIerの経営幹部は、「建設業界と比べ全くなっていない」と言われても、「その通りなんですよ」と同意していたから、これはIT業界での共通認識であったのも事実だ。今でも「プロジェクト管理では建設業界が我々のお手本」と語る人もいる。実際に昔は、SIerが元請けの責務を果たさず下請けに丸投げして、壮絶に破綻したことも度々あったから、この認識はやむを得ない面もある。

 結局のところ、SIerの以前のプロジェクト管理はあまりに酷く、何度も痛い目に遭ってきたので、それなりに努力した結果、建設業界に比べてはるかにマシのレベルに達したと言えるだろう。そう言えば建設業界以外にも、いわゆる“一流企業”がプロジェクト管理絡みで不正を働いたり、壮絶な赤字を出したりすることが最近やけに目立つ。それを考えると、IT業界はエライじゃないか。