日本のIT業界やユーザー企業のIT部門で高齢化が進んでいるのは周知の通りだ。もう少し正確に言うと、少子高齢化ならぬ少“若”高齢化。特に大手SIerでは50代のシニア技術者の割合が増え続け、20代、30代の若手技術者の割合がどんどん減っている。技術者の高齢化はシステム開発や保守運用で人月商売を繰り広げるSIerには由々しき事態に思えるが、実はそうではない。

 由々しき事態どころか、これはSIer各社に共通する生き残り戦略である。SIer各社の決算を継続的にウオッチしている読者はご存知だと思うが、案件が増えて超売り手市場になっても、SIerはどこも売上高をほとんど増やしていない。言うまでもなく、システム開発などの人月商売の売り上げは、下請け先も含め動員する技術者の頭数に比例する。つまりSIerは、昔のような無茶な技術者動員による売り上げ拡大を控えるようになったのだ。

 「今は技術者が不足しているから、売り上げを伸ばしたくても伸ばせないだけでは?」という疑問もあると思うが、少し違う。「技術者不足が深刻。経営上の大問題だ」などと騒ぐSIerの経営者は皆無と言ってよい。ただ単に、客に大幅な単価アップを迫ったり、危ない客の案件を断ったりする際に、技術者不足を格好の言い訳として使っているぐらいである。実際、利益率を大きく改善させたSIerは数多い。

 先ほど書いたように、売り上げは下請けも含めた技術者の頭数で決まるが、その要はもちろん自社の技術者である。基本的に自社の技術者の数で、動員できる下請け技術者の数が決まる。無理をして下請け技術者の比率を高めれば、プロジェクトが破綻・炎上するリスクが高まるからだ。そもそもSIerは以前のような大量採用をこのところ控えているから、SIerはM&A(合併・買収)でもやらない限り売上高が伸びない構造ができていたわけだ。

 当然、大量採用時代に入社した技術者の高齢化に伴い、SIerの社内では少若高齢化が進む。なぜSIerが大量採用をやめたかについては、以前この「極言暴論」で書いたので、そちらを参照していただくとして、今回は少若高齢化の進行がSIerの経営に与える影響について書く。実は驚いたことに、SIerの多くが少若高齢化の進行を前提に、生き残りを図ろうとしている。そこでSIerの「オヤジ化作戦」と命名して分析してみようと思う。