IT業界に限った話ではないが、顧客満足度という指標について誤解しているビジネスパーソンが多い。SIerの経営者にも顧客満足度信者みたいな人がいて驚かされる。顧客の満足を高めることは別に間違っていないが、一つ前提がある。客のIT部門、CIO(最高情報責任者)などが“立派な大人”であることだ。甘えきった客が相手なら、顧客満足度を上げる前にやるべきことがある。

 ITベンダー、特にSIerの技術者や営業担当者なら必ず出くわすであろうアホな客を例に挙げて、分かりやすく説明する。大企業、著名企業であることを笠に着て、システム開発や保守案件において丸投げ状態であるにもかかわらず、買い叩けるだけ買い叩いた揚げ句挙句、「ITベンダーはろくな技術者をよこさない。なめているのか」と怒り出すシステム部長。よくいるタイプだが、本当のアホである。

 こんな客でも「お客様だから」といって満足度の向上に努めるのか。考えれば考えるほど愚かなことである。この手の客に対する時に、まずやるべきことは満足度の向上ではなく、記事のタイトルの通り「しつける」ことである。というわけで、今回の極言暴論は「客のしつけのススメ」だ。本題に入る前に、例示したシステム部長がなぜアホなのか、その理由をいくつか挙げておこう。

 理由その1。「大企業であるウチの仕事は魅力的なはずだから、ITベンダーに泣いてもらっても大丈夫」との確信から、買い叩けるだけ買い叩く。だが、ITベンダーをもうけさせてやらないで、どうして良い仕事を期待するのか。価値の等価交換という商取引の基本が分かっていない。理由その2。優秀な技術者をはした金で使えると思う恥知らずっぷり。ITの専門部署のはずなのに、技術者に対するリスペクトの無さはいかなることか。

 そして3つめの理由。極言暴論で何度も書いていることだが、この手の客は発注者としての責任を全く果たしていないし、そのことに思いも至っていない(関連記事:「我々は素人」と開き直るIT部門に聞く、では何のプロなのか)。実際の開発はもちろん、要件定義やプロジェクト管理すら自分で行えないド素人だから、ITベンダーや技術者をアゴで使おうとする。で、意に沿わないと怒りだすわけだ。