SIerにとって、有能なプロジェクトマネジャーの育成は最も重要な経営課題の一つだ。なにせ、彼らの腕次第でシステム開発プロジェクトの損益が決まってしまう。下請けのITベンダーだけでなく、プロジェクトの途中でワガママを言い出しかねないユーザー企業を適切に管理して、QCD(品質、コスト、納期)を満たすシステムを作り上げるには、相当のスキルと人間力を持ったプロジェクトマネジャーが必要不可欠だ。

 さらに、SIは人月商売のため、技術者数によって売り上げのアタマが抑えられるが、SIerは内製比率を下げて、下請けのITベンダーにプログラミングなどの開発業務を丸投げすれば、請け負える案件が増え売り上げも拡大できる。しかし、それが可能になるのは、ベンダーマネジメントに長けた優秀なプロジェクトマネジャーがいればこそである。

 このため、SIerはプロジェクトマネジャーの育成に力を入れる。ところが現実はなかなか厳しい。若手中堅のプロジェクトマネジャー(見習い)が伸び悩み、システムの一部モジュールの開発を任せられても、プロジェクト全体を安心して任せられる人材になかなか育ってくれない。これは昔から頭の痛い問題だったが、経営幹部やベテランのプロジェクトマネジャーからすると、以前よりもその傾向が酷くなったようにみえる。

 理由は簡単だ。身も蓋もなく言えばSIer、特に大手SIerの場合、請け負うプロジェクトの規模が大きいからだ。規模が大きいプロジェクトは難易度が高いために、どうしても実績のあるベテランのプロジェクトマネジャーをアサインしがちになる。何のことは無い。プロジェクト全体を任せられる人材が育たないのではなく、プロジェクト全体を仕切る機会を与えていないのだ。

 全体を任せてもらえないのなら、若手中堅はプロジェクトマネジャーとして育つ機会を奪われているに等しい。だから、若手中堅のプロジェクトマネジャー(見習い)は自分のキャリアについて考え直したほうがよい。システム設計を全く手掛けないプロジェクトマネジャーの専門家を目指すならともかく、そうでないのならSIerで働き続ける是非も含め再検討することをお勧めする。