安倍政権がアベノミクスの成長戦略の柱に「女性が輝く社会の実現」を打ち出したこともあり、日本企業はマネジャーや経営幹部への女性の登用など一斉に「女性活用」に走り出した。SIビジネスを生業とするITベンダーもしかり。女性技術者の採用の拡大、プロジェクトマネジャーへの女性の抜擢などを積極的に推進しようとしている。

 ただ、ITベンダーの経営者から「女性活用」の話を聞くと、「あれっ」と首をかしげたくなることが多々ある。「それって単なる男女の機会均等、フェアネスの実現じゃないの」としか思えない話がとても多いのだ。フェアネスの実現は必要条件であり十分条件ではない。本当に必要なのはダイバーシティ(多様性)の実現なのだが、どうも女性の採用・昇進の話に矮小化される。

 ものの分かった人に言わせれば「女性活用がダイバーシティの実現だなどと思っているのは日本企業だけ」ということになる。実際に外国企業、特に外資系ITベンダーでは様々な国籍、人種、価値観の人が普通に働いており、その多様性の中から革新的なアイデアが生まれ、画期的な製品やサービスを創り出している。

 日本企業、特にITベンダーの場合はどうだろう。なんせシステム開発プロジェクトの現場は「新3K(きつい、帰れない、休暇が少ない)職場」で、建設現場の「3K(きつい、汚い、危険)職場」と並ぶ典型的な“男性職場”だ。多様性のかけらもない、どんな理不尽なことでも耐え抜くというチンイツの価値観が支配する人月商売・多重下請けの現場と言い換えてもよい。

 そんな新3K職場に、その価値観に染まった女性技術者や女性プロジェクトマネジャーを増えるだけならば、 “ITの仕事”に明るい展望は描けない。