大手ユーザー企業を含め、IT部門の多くで素人集団化が進んでいると、この「極言暴論」で何度か書いてきた。プログラムを書かなくなって久しく、当然のことながら最新のITについても全く分からない。歴代の経営者に「カネ食い虫」と見なされ、リストラ対象にされたという気の毒な面はあるが、なにゆえ「我々は素人」と開き直れるのだろうか。恥ずかしいったらありゃしない。

 大企業のIT部門から「我々は素人」という声が出るようになったのは、2000年代半ばのことと記憶している。IT部門で技術者としてキャリアを積んだはずの著名なCIO(最高情報責任者)でさえ、「我々IT部門は素人だからね」と言い出すのを聞いて、驚いたことを思い出す。それはちょうど、2000年問題や個人情報保護法への対応などが終わり、IT部門から「やることが無くなった」時期とぴったり一致する。

 もちろん、全くやることが無くなったわけではないが、IT部員が技術者として腕を磨いてきた基幹系システムの構築・更新がほぼ完了し、保守・運用がメインの仕事になった。ちょうど「日本の失われた20年」の真っ最中だったこともあり、「システムを作らないなら、そんなに人は要らないだろう」との経営判断で、IT部門の人員は削減され、技術力やノウハウを急速に喪失しつつあった。

 一方で、ITは本格的なインターネット時代となり、OSS(オープンソースソフトウエア)も多数登場してくる。IT部門が慣れ親しんだメインフレームはもとより、ようやく習得したC/S(クライアント/サーバー)システムも時代遅れとなった。しかも事業部サイドからは、そうした最新技術を活用してビジネス直結のシステムを開発してほしいというニーズが寄せられるようになった。

 IT部門としては、もうお手上げである。で、「我々は素人」という声がIT部門で出てくるようになったわけだ。「そうすると『我々は素人』というのは、単に客観的事実を言っているか、その現状を嘆いているだけで、開き直りとまで言えないんじゃないの」と思う読者もいるだろう。ところが、違うのである。「我々は素人だから…」の後に、ITベンダーに対する厚かましい要求が続くのだ。