最近、多くのユーザー企業でIT部門の地盤沈下が加速している。「それは以前からの話。木村さんも書いてきたではないか。何を今さら」。読者の声が聞こえてきそうだが、今回問題にするIT部門の地盤沈下は、経営から見た重要度の低下の話ではない。それこそ「何を今さら」だ。問題は、企業のIT活用におけるIT部門の役割の低下。しかも地盤沈下といった生易しいものでなく、IT部門の役割は崩落状態なのだ。

 こんな数字がある。調査会社のITRの「IT投資動向調査」によると、IT部門が決定権を持つIT支出の割合が、2015年度には42.7%に落ち込んでいる。つまり、ユーザー企業がITに使うカネの4割にしかIT部門の権限が及ばないわけだ。しかも、2年前の2013年度に比べると10ポイントも低下している。まさにIT部門の影響力は崩落状態にあると言ってよい。

 ご存知のように私はいつも、この「極言暴論」でIT部門の問題点を指摘し、多くのユーザー企業でIT部門の解体・再編が必要と主張している。その私が、この数字には驚いた。想定以上のドラスティックな落ち込みである。私は決して“IT部門不要論者”ではないが、このままでは近い将来、IT活用において、既存のIT部門が無用の存在になるユーザー企業が続出するかもしれない。

 驚いたとはいえ考えてみると、最近のIT部門の影響力や役割の急激な低下は当然すぎるぐらい当然。IT部門は基幹系システムのお守りで手一杯だが、経営はそんなレガシーなIT支出の削減の手を緩めない。一方、事業部門はビジネスのデジタル化に向け、自身の予算でIT支出を急増させている。もはやシャドーITではなく正規の支出だ。IT部門が決定権を持つ割合が急低下するのは当たり前である。

 このトレンドはもう止められない。今さらIT部門の権限を強化するのは、IT部門が素人集団化している現状を考えると、経営リスクが高すぎる(関連記事:「IT部門は素人集団」という事実を知らない社長の大問題)。ユーザー企業の経営は、この現実を前提にITガバナンスを考える必要がある。蛇足として言えば、ITベンダーもビジネスモデルを変えないと、間もなく大変なことになる。