「官公庁のシステム開発については、プロジェクトに携わる民間の技術者の勤務時間を1日8時間とする。それを超える残業は一切認めない」。こんな法律を作ってみてはどうか。発注者として最低最悪の官公庁のシステム開発と、安倍政権の掲げる長時間労働の是正など働き方改革を両立させる方法は、これしかないと思うぞ。いや、本当に。

 以前、この「極言暴論」で、IT業界の技術者の勤務実態を放置することは、安倍政権の政策に背を向けることだと書いた(関連記事:安倍政権の政策に背を向けるIT業界、問題是正は元から絶たなきゃダメ)。なんせ他の業界の人から「現代の蟹工船」と呆れられるほどの長時間労働で、「新3K(きつい、帰れない、休暇が少ない)職場」だ。働き方改革が最も必要な業界と言ってよい。

 もちろん、多くのITベンダーの経営者が“正しく”責任回避するように、その大きな原因をつくっているのは顧客だ。下請けITベンダーの新3Kは元請けのSIerの責任、SIerの長時間労働はユーザー企業の責任。そもそもユーザー企業のIT部門がユルい要件定義しかできなかったり、利用部門の横暴を制御できなかったりするから、開発プロジェクトが大炎上して、技術者たちがデスマーチになる。

 「ユーザー企業」と書いたが、最低最悪の“ユーザー”は企業ではない。冒頭に書いたように、最低最悪は冒頭で記したように官公庁や、その外郭団体のIT部門である。このことは、ITベンダーの人なら全員が同意してくれるだろう。転職したことのない世間知らずの官僚の皆さんは同意できないだろうが、これは客観的事実である(関連記事:発注者として最低最悪、公共機関のシステムをどうするのか)。

 なんせ何から何まで丸投げで、まともな要件定義もできない。要件定義に手間取ると、平気で開発期間を短縮する。利用部門に「こんなんじゃ使えない」と怒鳴られると、安易に手戻り、作り直しを要求。それなのに納期などは絶対厳守。そして「お客様は神様」の意識。挙げればキリがない。そんなわけなので、官公庁のIT部門の問題点を類型化すれば、企業も含め全てのIT部門の問題点を網羅できてしまう。