今回の「極言暴論」のタイトルを見て、「そりゃ当然だろ」と冷やかに受け取る読者もいれば、「何をひどいことを言っているんだ」と憤慨する読者もいるかもしれない。だが、私が今回の記事で書く内容は、おそらく皆さんがこのタイトルから想像しているものとは別の話だ。ただし、下請けITベンダーの技術者はもとより、SIerの技術者にも「ひどいこと」が起こるのは避けられない。

 本題の前に、極言暴論の読者なら当然想像しているであろうことを前置きとして書いておく。それは私がいつも書いている「SIビジネス死滅の歴史的必然」の話だ。SIという人月商売はおそらく2020年の東京オリンピック・パラリンピックのころまでは好況が続くが、その後は構造不況に陥り、2020年代を通じてどんどんシュリンクしていく。死滅というのは極論かもしれないが、当のSIerが楽観的に見積もっても市場規模は半分になる。

 理由はもちろん、日本のIT市場の構造変化だ。多くのユーザー企業が今、IT投資をデジタルに振り向けている。SIerをはじめとする人月商売のITベンダーにとって“米びつ”だった基幹系システムの投資を絞り、IoT(インターネット・オブ・シングズ)や人工知能(AI)などを活用し、本業のビジネスのデジタル化、いわゆるデジタルビジネスの取り組みを始めた。

 これはどういうことかと言うと、基幹系は既存のシステムを塩漬けにするか、刷新しても可能な限りパッケージソフトウエアやクラウドを活用する。一方、デジタルビジネスのためのシステムはクラウドも活用しつつ、ユーザー企業自らが内製する。その結果、SIerが請け負うシステム開発の工数はどんどん先細って行くから、SIerとしては下請けITベンダーを切り捨てることで、自社の技術者にあてがう仕事量を確保するしかない。

 まあ、これが誰もが想像する下請けITベンダー切り捨ての構図だろう。だが、少し考えれば分かることだが、これではSIerはしばし延命できるだけで、抜本的な生き残り策にはなり得ない。下請けITベンダーを全て切り捨て、プログラムをまともに書いたことがない役職者も“にわかプログラマー”に仕立てたところで、それ以上に人月商売の仕事量が減ればそれまでだからだ。