真夏の暑い日々が続いている。夏休みモードでもあることなので、今回の「極言暴論」では、技術者の皆さんに少しでも涼んでいただくために、怖い話をしたいと思う。題して「ミスマッチ失業の恐怖」。私が言うところの“ITムラ”の技術者、つまりユーザー企業のIT部門と、SIerなどのトラディショナルなIT業界にいる技術者には近い将来、確実にリアライズする怪談である。

 なんで、こんなふざけた書き出しにしたかというと、目の前の業務に忙殺されてか、多くの技術者があまりにも先のことを考えていないからだ。私は、SIerを頂点とする多重下請け構造のIT業界は滅びると主張している(関連記事: SIerの余命は5年、オオカミは本当にやって来る)。ユーザー企業のIT部門も間もなく用済みになるとも言っている(関連記事:寿命が尽きるIT部門に「終活」のススメ)。

 こうした記事はバカ受けするのだが、技術者の皆さんの危機感が高まらない。いや、強い危機感を持つ人もいるが、その危機感が技術者の間に広がらない。多くの技術者がボーっとしている。「なぜだろう。私だったら心配で夜も寝られない」と不思議だったのだが、そうかと思い当たった。ITベンダーやIT部門といった組織が“オワコン”と言われても、我がこと感を持てないに違いない。

 だが、個々の技術者個人の問題に引き寄せてみたらどうか。ITベンダーやIT部門の問題は、技術者個人が持つ技術やスキル、経験などの価値の磨耗という問題になる。ビジネスのあらゆる領域でITが活用されるデジタル化の時代を迎え、技術者不足はどんどん深刻になっていく。だが、ITムラの住人の技術やスキル、経験では対応できない。技術者への求人はどんどん増えるが、皆さんは用済みなのである。

 これをミスマッチ失業と呼ぶ。例えばCOBOL技術者。金融のシステム開発などがパニック状態だったこともあり、ITベンダーは若者をせっせと“コボラー”に仕立て上げたが、彼らは数年後にはお払い箱になるリスクに直面する。こう言うと、その道の大御所たちは「COBOL技術者へのニーズは将来もあるから大丈夫だ」と反論してくるだろう。だが、そんな世迷い事を信じてはならない。大丈夫なのは彼らであって、あなたではない。