言っていることは分かるが、解決する方法が見当たらない――。SIビジネスを主力とする日本のIT業界の構造的問題点を45にわたって指摘した「記者の眼」に対して、読者から多数のコメントを頂いた(関連記事: IT業界の人月商売、多重下請けがもたらす45の害毒)。その中で最も多かったのが、「じゃぁどうする」だった。

 IT業界における、多重下請け構造を前提とした人間商売の問題は、実に根が深い。もう四半世紀以上の昔から言われていることだ。IT業界の心ある人が「何とかしなければ」と思いつつ、どうにもならなかったことだ。だから読者の皆さんが「解決策が無い」と考えても無理からぬことである。

 だが私は、あと数年でIT業界の問題があらかた解決してしまうのではないかと楽観している。なぜなら、IT業界に人月商売と多重下請け構造を生み出した“諸悪の根源”である発注元、つまりユーザー企業が大きく変わるからだ。

 こう書くと、ファンクションポイント(FP)などによる見積もりを提示しても「分からないから人月にして」と言われたり、要件定義も含め丸投げされたりし続けてきたITベンダーの人は「客が変わるわけがないじゃないか」と冷ややかに受け取るかもしれない。だが客は変わる。多くのユーザー企業でIT部門の没落が必定だからである。

 今ユーザー企業の中では、IT投資の権限がIT部門から事業部門へ急速にシフトしている。そしてIT投資権限を握った事業部門が求めるのは、ビジネスに資するITであり、人月という“目方でなんぼ”のシステムではない。しかもITベンダーには御用聞きではなく、ビジネスのパートナーであることを期待する。だからIT部門と共に没落しない限り、IT業界の未来は明るい。