最近、この「極言暴論」を書いていて思うのは、「自分が怒っていないな」ということ。以前は、ユーザー企業のIT部門やITベンダーの理不尽や不条理にかなり怒っていて、文章にもその怒りが十分に乗っていた。だが、記事を書く形で怒りを吐き出してしまうと“憑き物”が落ちる。そんなことを繰り返してきたので、最近では穏やかな気持ちで極言暴論の記事を書いている。

 いや、“穏やかな”というのは適切な言葉ではない。むしろ“冷やかな”と言ったほうがよいだろう。怒りに任せて誰かを撃ち抜くような記事を書くのはもちろん慎まないといけないが、少なくともそこには熱い思いがある。一方、冷やかな気持ちで記事を書くのは、全く褒められたものではない。論説がシニカルになり、読者の心に響くものになり得ないからだ。

 そんなわけなので、最近の私は極言暴論の執筆に当たって、「シニカルにならないように、熱い思いを持ち続けるように」といろいろと苦慮している。ところがである。そんな私が久しぶりに怒った。怒りの矛先はSIerなど大手ITベンダーの経営幹部だ。ただし、これまで何度も書いてきたような人月商売や多重下請け構造の件ではない。話はこうだ。

 ある大手SIerの経営幹部がこんなことを言う。「最近のIBMの発表は中身が無いね。要は口だけ。でも、口だけでも、あんなふうに騒いでくれると、お客がその気になるから、ありがたいね。我々は何もしなくても“実”を取れる」。この経営幹部が何の話をしているかというと、日本IBMのAI(人工知能)やIoT(インターネット・オブ・シングス)ソリューションなどの発表についてである。

 「おい!」である。実は、この手の話をするSIerなどの経営幹部は以前から大勢いた。日本のITベンダーにとってIBMは以前から、見習うべき“先生”であり、新技術などの市場を開拓してくれる、ありがたい存在だった。ただ、今に至ってもまだ、こんな話をしているとは、いかなる了見か。この話を聞いた時は「相変わらず恥ずかしいことを言う」ぐらいしか思わなかったが、考えれば考えるほど腹が立ってきた。