これからの時代、バックヤードの基幹系システムが企業のイノベーションの要となる。従って、ポンコツの基幹系システムを抱え込んだままの日本企業は、グローバル競争に敗れ、このままでは破滅の坂道を転げ落ちる。こう書くと、「ちょっと待て、お前はこの極言暴論で『基幹系システムには何の付加価値も無い』と言ってきたではないか」との非難が聞こえてきそうである。

 その通り。現状では、ほとんどの企業において基幹系システムに付加価値は無い。ただし、それは現行の基幹系システムのことである。多くのIT部門がこの愚にもつかないシステムの保守運用の業務を「重要だ、重要だ」と言うから、「そんなものに何の付加価値も無い。単なるカネ食い虫だ」と暴論してきたまでである。

 そして私は、ビジネスのイノベーション、最近のバズワードで言えば「ビジネスのデジタル化」に資するITに投資の重点を移すべきだとも主張してきた。さらに言えば、スピード感が求められるイノベーション領域のシステム開発を、既存のIT部門に任せるとロクなことにならないので、IT部門は基幹系システムにお守り役としてパッキングしてしまい、事業部門が新たなIT投資を主導したほうがよいとも言ってきた。

 だが、私は状況判断を少し誤っていたようだ。製造業におけるIoT(Internet of Things)を活用した新サービスの創出、スマホによる決済など金融業におけるFinTechの台頭。eコマースと実店舗を組み合わせた小売業でのオムニチャネルの取り組みなど、ビジネスのデジタル化はグローバルで、そして日本でも予想を超えるスピードで急進展しているのだ。

 まさにデジタルビジネスの時代は間もなくだ。実は、そうなると日本企業にとって、抱え続けたポンコツの基幹系システムは大変な桎梏となる。このままでは外国のグローバル企業と競争で後手を引くことになり、デジタル化した本業の収益力を弱める“貧乏神”になる。できる限り早急に、劣化したIT部門もろとも、いったんは木っ端微塵にすべてきである。