ERP(統合基幹業務システム)嫌いなシステム部長は結構多い。「ERPが嫌いだから導入しない」という意味ではない。既にERPを導入して何年も経っている企業のシステム部長が、ERPやその開発ベンダーに対して不満タラタラなのだ。特に往年のビッグバン導入、つまり「全社的な業務改革をERP導入により実現した」と喧伝していた大企業のシステム部長が、ERP否定論者だったりする。

 もちろん彼らも、表立ってはそんなことを言わない。だが、非公式な場、例えば様々な企業のシステム部長、あるいはCIO(最高情報責任者)らが集まる勉強会などでは、ERPの悪口のオンパレードとなる。「使い勝手が悪い」「保守料金が高すぎる」「ベンダーのサポート対応がけしからん」などといった具合だ。軽い悪口といったレベルではなく、かなりシリアスに怒っている人もかなりいる。

 以前こんなことがあった。ある懇親会の会場で、大手製造業のシステム部長と雑談をしてERPの話になった時、この人は声を潜めて「木村さん、『ERPは使えないからユーザー企業はERPを破棄しよう』という記事を書かないか」とささやいたのだ。この人の思惑がすぐに分かった。「では、部長さん、そのテーマで取材を受けていただけますか」と切り返すと、案の定「それは無理!無理!」との返事。

 このシステム部長も、ビッグバン導入したERPが気に食わない。「ERPは自社の業務のやり方に合わないから破棄したい」と話していたのを聞いたこともある。で、ERP不要論の世論醸成を狙ったのだろう。私にそんな怪しい誘いを投げてきたわけだ。だが、公式な場で責任ある発言ができないのなら論外。それに私は以前から「ERPは使えなくても使うべし」と主張しているから、話はそれまでだった。

 「じゃ、今回の極言暴論のタイトルは何だ!」と読者から怒られそうだ。だが、何も矛盾したことは言っていない。そんなにERPが嫌いなら、というか本当に自社にとってERPが役に立っていないどころか、マイナスになっているのなら、とっとと破棄してしまえばよい。そのデシジョンを行う立場にある人が、陰で悪口を言って溜飲を下げているだけなのは、みっともないし、そもそも職務怠慢である。