SIerや下請けの受託ソフトウエア開発会社など SIガラパゴスに生きるITベンダーの経営者は、口を開けば「IT人材が足りない!足りない!」と騒ぐ。だが、彼らが足りないと言うIT人材とは、大型案件が集中する今の繁忙期を乗り切るための“臨時工”か、スパゲティ状のコードを永遠に保守し続ける“コボラー見習い”の若者だ。本来、必要なはずのIT人材に関心が無いから恐ろしい。

 必要なはずのIT人材とは、別にニュータイプの技術者のことを言っているのではない。以前から必要性が叫ばれてきた「顧客の業務や最新技術に知見を持ち、提案できる技術者」のことだ。だから一応、ITベンダーの経営者も口では、そうしたIT人材が必要だと言う。だが今、欲しいのは臨時工か、コボラー見習い。だから技術者を志す若者は、彼らの言う必要な人材の意味を見極めないと、あとで泣きを見る。

 臨時工とコボラー見習いのうち、ITベンダーにとって焦眉の課題は臨時工の“調達”だ。金融や公共など超大型案件の集中と景気回復が重なり、とにかく人が足りない。SIerは多重下請け構造をフル活用して、頭数をそろえようとする。技術者と呼べない素人にも「SE」の肩書きを与えて動員する。では需給が緩んだら、そうした臨時工はどうなるのか。それはSIerの知ったことではない。自社の社員ではないからだ。

 一方、コボラー見習いの確保は長期的課題だ。最重要顧客の金融機関には膨大なCOBOL資産があり、その保守業務はITベンダーにとって最もおいしい仕事。なんせ金融機関はカネ払いがいいし、一度請け負えば永続的な仕事となる。それを古参技術者たちが手掛けてきたわけだが、最近どんどんリタイアしている。で、ITベンダーの経営者は「若者にCOBOLをやらせるのは忍びない」と言いつつ、コボラー見習いの確保に走る。

 もの凄く嫌味に言うが、「人財が全て」のITベンダーは臨時工とコボラー見習いを手当てすれば、短期と長期の両面でメドが付く。経営として完璧で、もう他に何もする必要が無い…。だが、本当にそれでよいのか。その辺りの話については、この「極言暴論」などで何度も書いてきたが、今回は人材の話で暴論する。いや、実は単純明快な話をするだけなのだが。