この「極言暴論」では、いつもIT部門の問題点について暴論しているが、今回ばかりはIT部門のことを悪く書かない。日本企業のIT部門に巣くう被害者意識、というか疎外感の原因について述べようと思う。もちろん、それはこの記事のタイトルのまんまだ。いつも読者から「極言暴論では解決策が書かれていない」と非難されるが、今回は解決策も書く。だが、その解決策もまた、お察しの通り簡単な話だ。

 まずIT部門の被害者意識、疎外感。「IT部門は限られた人員で日々、システム障害やセキュリティ上の問題などを生じさせてはならないという強いプレッシャーの下、業務を遂行している。にもかかわらず、経営や事業部門はその役割の重要性や困難さを理解しようとせず、システムは問題なく動いて当たり前と思っている。反対に、もし何かあれば、社内からの大きな非難にさらされる」。

 およそIT部門の人なら年齢や役職を問わず誰もが、そんな話をする。まさに企業の枠を超え全てのIT部門に共通する被害者意識、疎外感と言ってよい。この「頑張っても評価されない」「失敗すると非難される」という意識は、IT部門を保守的にする。デジタルビジネスへの対応を求められたりすると迷惑千万だ。「忙しくて対応できない」「セキュリティ上問題」などと言って動かない抵抗勢力となる。

 しかも、単にIT部門の被害者意識、疎外感にすぎないなら、まだよい。経営から本当に軽く見られ、基幹系システムの保守運用に必要な人員すらリストラされたIT部門もある。そうなると、もはやITベンダーを頼るしかない。保守運用業務はベンダーへの丸投げとなり、IT部員は“ベンダーマネジメント”という窓口業務を行う単なる担当者となり、IT部門は技術者集団から素人集団へと風化する。

 その辺りのIT部門の問題を、これまで極言暴論で個々に指摘したわけだ。では、なぜ多くの企業でIT部門が経営から軽く見られ、そんな被害者意識をため込んだのか。「そりゃ、社長がバカだからでしょ」と読者から突っ込まれそうだ。暴論としてはその通り。だが、そうすると歴代の社長が皆バカだった理由は何か。実は、社長をバカなまま放置し、IT部門を疎外した張本人は、IT部門の長(おさ)たちなのである。