劣化が進むIT部門は、多くのユーザー企業にとって頭痛のタネ。ITを活用してビジネスを革新する「ビジネスのデジタル化」の時代を迎えたのに、肝心のIT部門が何の企画も出せないばかりか、そうした問題意識すらなく既存システムのお守り業務に埋没している。由々しき事態だが、実は抜本的解決策も見えている。事業部門にいる技術者にIT部門を乗っ取らせてしまうのだ。

 IT部門の劣化は今に始まったことではない。製造業を中心に2000年あたりから基幹系システムの開発案件がほとんど無くなり、IT部門はシステムの運用保守に明け暮れるようになった。IT部門やITベンダーがひた隠しにしていた「基幹系システムは経営マターにあらず」(IT doesn't matter)が経営者にバレたこともあり、IT部門は人員削減やアウトソーシングなどのリストラを余儀なくされた。

 ところが世の中の流転は恐ろしいもので、最近になって全ての企業にとってITの重要性がにわかに、そして極限的に高まった。もちろん重要になったITとは基幹系システムではなく、ビジネスに直結するIT、ビジネスを革新するIT。経営陣や事業部門はビジネスでライバルに勝つためのシステムを求めるようになったが、当然のことながらリストラされ劣化したIT部門は対応不能だ。

 で、「なんだ、あいつらは。ITの専門家ではないのか」とIT部門に対する社内の風当たりは強くなる。IT部門は「経営がITの重要性を理解しないから、こうなったのではないか。我々は基幹系システムの運用保守で精一杯なんだ」と悲憤慷慨するが、それは全くの間違い。そもそも経営陣が重視するITは別のITだし、理不尽だが「既存業務で精一杯」は“怠慢”の理由にはならない。

 本当は、ここに至るまでの間にIT部門として、何らかの手を打たなければならなかったのだ。基幹系システムはお守りをITベンダーに完全に任せるかクラウドに移行するかして、IT部門のリソースをビジネスに資するITに向ける。部員の意識改革も促し、事業部門や経営陣と会話し、ITの専門家としてビジネスに貢献する。そんな改革をやる必要があった。だが改革をずっとスルーし、今やタイムリミットを過ぎてしまった。