パナソニックの2つのシステム子会社、そこで働く技術者の対照的な運命は、ユーザー企業のIT部門だけでなくIT業界でも大きな関心事となった。何度も報道されていることなので、くどくどと説明しないが、要約するとこうだ。かつて松下電器の情報化を担った子会社はITベンダーに売却し、旧・松下電工の子会社を今後、パナソニックグループのIT関連の中核会社と位置付ける――。

 以前、松下電工は松下電器の“兄弟会社”として独立色が強かったが、今ではパナソニック電工としてパナソニックの子会社だ。つまり旧・松下電工のシステム子会社は、パナソニックから見ると孫会社にあたる。その孫会社をパナソニックは完全子会社化して、2015年10月にも本社のIT部隊を移管する。どうしても旧・松下電器のシステム子会社と比較してしまう“厚遇”である。

 かくしてパナソニックグループのIT関連の中核会社となったパナソニック インフォメーションシステムズ(パナソニックIS)だが、昔は松下電工インフォメーションシステムズ(NAIS-IS)と称していた。ここからしばらく、このNAIS-ISの昔話を書く。実は、その昔話の中に、この会社の今がある。リストラされた旧・松下電器のシステム子会社に比べると、際立った特徴があるのだ。

 一言で言うと、昔から稼げる会社であり、稼げる技術者が多数いたということだ。旧・松下電器のシステム子会社はいわば普通のシステム子会社。他の多くのシステム子会社と同様、本社のシステムの運用などを手がけていた。一方、パナソニックISはNAIS-IS時代から外販に力を入れており、技術者自らが提案営業を積極的に繰り広げていた。

 「ちょっと待て。大手SIerにはシステム子会社が多い。珍しい話じゃないだろ」との声が聞こえてきそうである。実は、この会社が特異なのは外販に力を入れていることではない。特異なのは、松下電工からの独立直後に外販率が一気に高まったことであり、飛び込み営業を始めた当時の技術者が「営業なんて簡単だ」と豪語していたことなのである。