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木村岳史の極言暴論!

押すと何でもできるSIerの「お客様スイッチ」、人月商売からの脱却も?

木村 岳史=日経コンピュータ 2017/04/24 日経コンピュータ

 大手SIerの人に教えてもらったが、SIerには「お客様スイッチ」という便利な押しボタンがある。もちろん物理的にそんなボタンが存在するわけではないが、このお客様スイッチを押すだけで、あら不思議、社内で何度稟議を上げても、どんなに上司や関係者を説得しても通らなかった企画がたちどころにOKとなるという。「何か新しい事をやりたい時には特に有効」なのだそうだ。

 お客様スイッチって何だと不審に思った読者は、おそらくユーザー企業側の人だろう。SIerだけでなく日本のIT業界の関係者なら、既にピンと来ているだろう。口を開けば「全てはお客様のために」「お客様に寄り添う」「お客様のために絶対に逃げない」などと気色の悪い言葉が飛び出すSIerでは、「お客様が求めておられる」と言えば、つまりお客様スイッチを押しさえすれば、大概は社内で通ってしまうというわけだ。

 例えば、何らかの新技術を活用すべきだと考えている技術者がいたとしよう。だが、枯れた技術が大好きなSIerの社内では、「なぜ我々がこの技術に取り組まなければならないのか」というふうに、単に意義や必要性を主張するだけではほぼ間違いなくNGとなる。だから、目先の利く技術者はそんなスジ論(本当はこれが一番重要なのだが)で押し通すという下策を採らず、ここぞとばかりお客様スイッチを押す。

 要は、客を事前に巻き込んでおくのだ。相手がやはり枯れた技術大好きオジサンなら無理だが、技術の目利き役を自認するIT部門の人に話をつけ、客としてその技術を試験導入する承諾を取り付けておく。場合によっては、コストはSIerの負担でも構わない。そして社内稟議を上げる際に、「お客様がその技術の導入を強く求めておられます」と主張する。

 言うならば、お客様スイッチは「水戸黄門様の印籠」みたいなものだ。だから、よく効く。その「お客様」がビッグユーザーならば、よほどのリスクを伴わない限り、即座にOK。もう脊髄反射と同じである。決裁権限のある人に回った時点で、「お客様のお求めなのだから」と容易に許可が出る。必要なリソースも確保でき、技術者はメデタシメデタシである。

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