「御用聞き商売のSIや受託ソフトウエア開発は立ち行かなくなる」「ユーザー企業では事業部門が自らIT活用を推進し、引きこもり状態のIT部門はお払い箱になる」。私はこの「極言暴論」で主に述べてきたのは、ITベンダーとユーザー企業のIT部門、そして技術者の将来の危うさだ。だが、そうした記事に対しては必ず「以前から言われていたこと。新鮮味の無い話」との反応が返ってくる。

 確かに私も以前からそんな話を書いてきた。そして今、まだそんな追い込まれた状況に至っていないから、「オオカミ少年」と言われても致し方ない(関連記事: SIerの余命は5年、オオカミは本当にやって来る)。だが、ITベンダーの経営者や技術者が「どうせ煽り、今まで大丈夫だったのだから、これからも大丈夫だろう」と考えているなら、全くのアホウである。

 あえて断っておくが、「何度も同じことを書くな。そんなことは先刻承知だ」と覚悟を決めている人をアホウと言っているのではない。「オオカミが本当にやって来るぞ」と何度も言われ続けているにもかかわらず、ボーとしているITベンダーの経営者や技術者がアホウなのである。ボーとしている人たちは、二重の意味で大きな間違いを犯している。

 まず「以前から言われていたこと」の評価が狂っている。たとえ話を変えて言うと、海洋をゆく船の乗組員が、氷山との衝突を警告されているにもかかわらず、「今まで氷山に出会わなかったから大丈夫」と安心しているようなもの。もう一つの間違いは、ユーザー企業の経営層や事業部門におけるITニーズの激変に、あまりにも無関心なことだ。多数の氷山が浮かぶ海域に入ったのに気付こうともしないのだ。

 船の前方に大きな氷山があって、このままではぶつかって沈没するという時、乗組員は必死で進路を変えて沈没を回避するか、海に飛び込んで自ら泳ぐしかない。「氷山なんて存在しないよ」「沈没なんかしないよ」とノンビリ構えていると海の藻屑。船はITベンダーやIT部門の例えであり、乗組員はもちろん技術者のこと。皆さんはどうするのか。