ある大企業のCIO(最高情報責任者)と雑談をしていた時、若手をどう育成するかという議論になった。若手部員の育成は、どの企業のIT部門でも共通の悩み。いろいろと話を聞いていたが、ふと思い至った。

 今のIT部門では、若手育成などどだい無理。IT部門に若手、特に新人を配属してはならない。労働力不足の折なのだから、むしろ定年退職後に再雇用したシルバー人材を中心に運営するべきだ。

 いきなり若手の育成の話からずれるが、IT部門の人はよく「システムは動いて当たり前。まともに動かしても評価されないし、止まると怒られる」とボヤく。私はそんな話を聞くたびに、「この人たち、バカじゃないの」といつも思う。自虐的すぎるというか、被害者意識が強すぎる。システムの運用に限らず、どんな仕事でも業務が普通に回って当たり前である。

 例えば、こうしたIT部門のボヤキを工場の人が聞いたらどう思うだろうか。私と同じで、やはり「バカじゃないの」と思うか、「何を甘えたことを言っているのか」と吐き捨てるだろう。こう置き換えてみるとよい。「生産ラインは動いて当たり前。まともに動かしても評価されないし、止まると怒られる」。

 他の職種でも同じだ。IT部門の人はどうやら、大きな成果を出せば高く評価される営業の仕事を念頭に、そんな“甘えた”発言をしているように思われる。だが、営業の仕事にはノルマがある。そして、ノルマを達成して当たり前なのだが、企業の業況次第で往々にしてノルマは過大になる。やはり「できて当たり前で、できないなら怒られる」の理不尽さは、IT部門の仕事と変わるものではない。

 もちろん、IT部門の人たちに、成果を出せば評価されるチャレンジの機会が無いのは気の毒だとは思う。だが、「止まると怒られる」と被害者意識に凝り固まるのは愚か以外の何者でもない。その被害者意識ゆえ、「絶対にトラブル、失敗は許されない」という“石橋を叩いても渡らない”組織になる。ほら、若手や新人を配属しちゃダメでしょ。若者は失敗しなければいけないのに、IT部門の牢獄(ろうごく)に放り込んでどうする。