この「極言暴論」では、ユーザー企業のIT部門とSIerが織り成す不条理に切り込んで、いろんなことを言ってきたが、IT業界に数多く存在する下請けITベンダーのことはほとんど触れていない。「もういい加減にしないさい!」と言いたくなるようなトホホな話をよく聞くが、そんなことを書いたところで、あまりにも非生産的だからだ。

 それよりも、IT部門やSIerの問題点に焦点を当てたほうがよい。システム開発などを丸投げするIT部門、そして人月商売を営々と続けるSIerの多くが良き存在に変わるか、消滅すれば、IT業界の多重下請け構造、私が言うところの“ SIガラパゴス”も解体する。しかも私の見立てでは、そうしたIT業界のガラガラポンはあと数年で起こる(関連記事:「SIerの余命は5年」への反論に反論する

 そうなると、SIガラパゴスの中でしか生息できない“日本固有種”の下請けベンダーは一気に死滅する。これで多重下請けの問題はあらかた片付く。絶滅を止める必要性も感じないので、下請けベンダーについては基本、放置でよいと考えている。ただ、そこで働く技術者の人が、プログラマーならぬ“コーダー”の地位に留め置かれたまま、絶滅に巻き込まれると大変なので、一刻も早い脱出を勧めてきた。

 本当は、IT業界の多重下請け構造の解体前夜である今は、下請けベンダーにとって危機であるだけでなく、これまでなら有り得なかった企業変革・成長の千載一遇のチャンスでもあるのだ。そんなチャンスをつかむどころか気付きもせず、SIerから流れ出す下請け、孫請け、ひ孫請けの人月商売にしがみつく。そんな志も見識も無い下請けベンダーは消え去ったほうが、日本のためである。

 かくのごとく私は下請けベンダーには冷ややかだったのだが、最近少し考えを変えた。「やはりこんな商売を続けていてはダメだ。ビジネスを変えよう」と本気で考える下請けベンダーの経営者に出会うようになってきたからである。そんな経営者に対して、私が必ず話すことがある。「小なりといえどもプライムを取れ!」である。今回はその話を書くことにする。