ある大手金融機関のCIO(最高情報責任者)は、役員室でドローンを飛行させた。Google Glassが発表されたとき、若手技術者にウエアラブル端末の研究を命じた大手小売りのCIOもいた。まだ海の物とも山の物ともつかない技術に飛び付くのは、ビジネスでの活用の可能性を今のうちから探っておきたいからだ。ちなみに、この2人のCIOはIT部門の出身者ではない。

 このところ、CIOは誰が相応しいかをずっと考えていた。もし企業が構造改革に取り組むためにITを活用しようとしているなら、経営企画担当や財務担当の役員がCIOを兼務、もしEC(電子商取引)などITを活用した事業を推進するなら、営業担当役員がCIOを兼務するのがよい。いずれの場合も、システム部長はCIOを補佐するのが分相応だ。

 これが最近の私のCIO論。ITは何かのための武器にすぎないわけだから、使う側の親玉であるリストラ隊長や切り込み隊長がCIOに相応しい。今どきIT無しに構造改革や新規事業の立ち上げなんぞはできないのだから、その道のプロがITを存分に活用して辣腕を振るうべきである。一方、武器の管理者にすぎない人はその補佐役に徹するべきであり、役員である必然性は無い。

 仮に役員にする必要性があるとしたら、よくネットベンチャーのIT部門の長が名乗るCTO(最高技術責任者)あたりが相応しい。ただCTOであっても、CIOの補佐役であることには変わりない。なにせIT部門の人たちは、システムを作ったり運用したりする経験は豊富でも、ビジネスの現場でシステムを活用した経験の無い人ばかりだ。企業の情報戦略の統括者の役割は無理である。

 やはりシステム部長やIT部員は、ITという武器の管理人に徹するべきである。そして優秀な武器の管理人がしっかり補佐しないと、CIOはビジネスの最前線あるいは修羅場で指揮を執ることができない。だからCIOになれないからと言って、IT部員は悲観する必要は無い。ビジネスの様々な局面でIT活用が必須になっている今、CIO補佐として能力を生かす機会はいくらでもある。