神庭基・旭硝子グローバルITリーダー情報システムセンター長(左)と日高信彦・ ガートナー ジャパン代表取締役社長(写真:的野 弘路、以下同)
神庭基・旭硝子グローバルITリーダー情報システムセンター長(左)と日高信彦・ ガートナー ジャパン代表取締役社長(写真:的野 弘路、以下同)
AGC旭硝子は長年使ってきた基幹の業務システムを作り直し、アマゾン・ドット・コムのクラウドサービスであるAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)の上で動かそうとしている。思い切った取り組みを決断した狙いや背景、決断に至るまでの物語は何であったか。IT(情報技術)組織のマネジメントの仕方も交えて神庭基グローバルITリーダー情報システムセンター長に、ITリサーチ大手、ガートナー ジャパンの日高信彦社長が尋ねた。神庭氏の背中を押したのは「やりたいことがアマゾンでやれます」と進言してきた部下たちだったという。
(構成は谷島宣之=日経BPビジョナリー経営研究所研究員、中村建助=日経コンピュータ/ITpro編集長)

日高:旭硝子さんは今、IT(情報技術)の世界で大変注目されています。長年使ってきた基幹の業務システムを作り直し、しかもアマゾン・ドット・コムのクラウドサービスAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)の上で動かそうとしているからです。

 コンピューターや記憶装置はアマゾンのものを使うわけで旭硝子が保有しなくて済む。こういうクラウドの利用という点でファーストランナーだと思います。

 どの企業でも大きな変化を起こそうとすると慎重な態度をとる人が出てくる。情報システム部門の中にもいるでしょうし、事業部門の同僚、経営者の中にもいます。どういう戦略を立て、慎重な人たちをどう説得したのでしょうか。

神庭:のっけからすいません。戦略を立てて説得と言われると自分の思いと少し違う気がします。クラウドによるコスト低減効果や利便性という狙いと一般的に言われるリスクについて説明しただけです。反対はありませんでしたので、特に説得のような事はしていないのです。

日高:もうやるぞ、と決めて進めたわけですか。

セキュリティーについては念入りに確認

神庭:そうですね。決済権限の範囲ですから自分で決めていいだろうと。勝手に?判断していました。誰かを説得するとか、社長が出席する公式会議に掛けるとか、そういう事はしませんでした。

日高:なるほど良いことばかりだと。説明して反論は出なかったのですか。

神庭:質問は出ました。情報セキュリティーはどうなのか、データは海外に置かないほうがいいのでは、とか。

 当然ですが、セキュリティーについては事前に相当綿密にチェックしました。内部統制との絡みがありますから、法務、監査室、監査法人の方々にもお願いしてチームを作り、徹底的に調査したのです。結果として全く問題ないことが確認できました。

日高:BCP(事業継続計画)について聞く人はいましたか。

神庭:決めた時は聞かれませんでした。最近になって、クラウドを使えばシステムを自分で持っていたときより少ない費用でBCP対策ができますのでやりましょう、と説明しているところです。

日高:自分なりのガバナンスというかコントロールする方法はありますか。

神庭:セキュリティのみならずクラウド利用に関してのガバナンスはきちんと決めようと、その方法を検討しています。

日高:ほとんどのリスクはご自分なりに考えて、先々何かあっても判断できるということですね。

神庭:はい、自分なりというか、チームとして検討していますので、大丈夫、できると思います。その辺りは相当調べましたので。

日高:初めてお会いしたときに感じたのですが、神庭さんの発想は論理的かつ戦略的で、細心の注意を払って緻密に進める。その一方で今日明日だけではなく、ちょっと遠い先まで考えて大胆な手も打つ。今回のクラウド利用もそういう感じですね。

神庭:そう言われると褒めすぎですが、いい加減な奴では無かったということで(笑)。