オリビエ・グアン 武田薬品工業チーフインフォメーションオフィサー(右)と日高信彦 ガートナー ジャパン代表取締役社長(写真:的野 弘路、以下同)
オリビエ・グアン 武田薬品工業チーフインフォメーションオフィサー(右)と日高信彦 ガートナー ジャパン代表取締役社長(写真:的野 弘路、以下同)

「社長CEO(最高経営責任者)のクリストフ・ウェバーと話したときに明確な指示が出ました。『デジタルビジネスで私たちがやらなくてはいけないのは戦略を作ること。その答えを90日で持ってきてください』と言われたのです」。武田薬品工業のオリビエ・グアンCIO(チーフインフォメーションオフィサー)はこう語る。武田のデジタルビジネス戦略についてIT(情報技術)リサーチ大手、ガートナー ジャパンの日高信彦社長が尋ねた(前編は『武田薬品工業CIO、「ビジネス無くしてIT無し」 ビジネスエグゼクティブの参加が何よりも大事』)。

(構成は谷島宣之=日経BPビジョナリー経営研究所研究員、中村建助=日経コンピュータ/ITpro編集長)

日高:ガートナーは「デジタルビジネス」というコンセプトを提唱しています。既存のビジネスがデジタル化によって変わっていくという意味です。武田薬品としてデジタルビジネスをどう見ていますか。製薬業界全体にどういった変化が出てくるでしょうか。

グアン:製薬業界は現在、様々な変化に直面しています。政府からの医療コスト削減の要請により、ジェネリック薬が伸長しています。特許切れに備えて新薬を育てる必要があります。さらに医療保険制度が成果ベースのシステムに移行しつつあります。

患者さんにとってのウェブの重要性

 患者さんも変化しています。一例を上げますと、多くの患者さんがウェブを見て情報を得るようになりました。ご自分の病気を理解したり、治療を把握したりするのに、患者さんはウェブを利用します。

 患者さんは実に様々なものを読んでいます。ウェブを使って、患者の方々とどのようにコミュニケーションをとっていくか。これは重要なテーマです。

 IT(情報技術)はウエアラブル(身に付けられる)になっています。薬と一緒にセンサーを飲み込めるようになるかもしれません。製薬会社が新薬を出す際に、患者さんに疾患等の情報発信するツールをアプリといった方法で提供する。数年もしたら、そうなることもあり得ます。

 まだ構想したり実験したりしている段階ですけれども、製薬業界の中で変化が起き、ITが使われ、新しいビジネスモデルにつながっていくはずです。

 私たちは変化をきちんと理解しなくてはいけません。そして、変化にフォーカスして迅速に動ける体制を整えなくてはなりません。武田のCIOに就任したとき、業務プロセスの標準化やIS(情報システム)/ITインフラの統合と同時に、デジタル化が不可欠だと思いました。そこでデジタルビジネスに取り組むチームを作ったのです。