オリビエ・グアン 武田薬品工業チーフインフォメーションオフィサー(右)と日高信彦 ガートナー ジャパン代表取締役社長(写真:的野 弘路、以下同)
オリビエ・グアン 武田薬品工業チーフインフォメーションオフィサー(右)と日高信彦 ガートナー ジャパン代表取締役社長(写真:的野 弘路、以下同)

グローバルカンパニーに変身しつつある武田薬品工業は、IT(情報技術)とIS(情報システム)を合わせたIS/ITの改革を進めている。CIO(チーフインフォメーションオフィサー)としてオリビエ・グアン氏をスカウト。グアン氏はネスレのCIOを長年務めたプロフェッショナルである。「ビジネスの視点無くしてIT環境の変革を成功させることはできません。ビジネスがドライバーになってITを動かすのです」と語るグアン氏に、ITリサーチ大手、ガートナー ジャパンの日高信彦社長が尋ねた。

(構成は谷島宣之=日経BPビジョナリー経営研究所研究員、中村建助=日経コンピュータ/ITpro編集長)

日高:ネスレでグループCIO(チーフインフォメーションオフィサー)を務め、ビジネスを支えるIS(情報システム)/IT(情報技術)のインフラストラクチャーを改革して成果を上げ、2014年1月から武田薬品工業にCIOとして入られました。1年半ほど経ったわけですが、今どのような考えで何に取り組んでいるのでしょうか。

グアン:これまでと違う環境に来て、新しい仕事を始めることが決まったとき、武田という企業のバックグラウンドを理解しようと思いました。そこで武田が買収した企業を訪ね、その役員たちに話を聞いたのです。

 ご存じの通り、武田は2005年から企業買収に乗り出し、ヨーロッパやアメリカで企業を買収しています。その結果、武田のグローバルプレゼンスは上がりました。ただ、グループ内の各社を見ると、業務プロセスやそれを支えるIS/ITに共通性がまだありません。

 CIOになったらすぐに変革を始めなければならない、しかも非常に早く進めなくてはいけないと考えました。そのためには我々が進む方向を示し、そちらに向かうように、人々をプッシュしなければいけません。

IS/ITについても“Global One Takeda”に

 入社してから1カ月後、最初のステップとしてIS/ITのインフラの統合を開始しました。“Global One Takeda”を目指してビジネスや組織をまとめていくためにも、新しいデジタル技術を使ってビジネスを変革していくためにも、IS/ITのインフラがばらばらではいけませんから。

 私が責任を持つIS/ITの領域について言いますと、世界に大きく4つのIS/IT組織があり、それぞれが仕事をこなしていました。そこで業務の標準化を進めたり、コラボレーションをしたり、プロジェクトを共同で運営したりしていくことを決めました。

日高:4つのIS/IT組織があり、それぞれ別の情報システムを動かしていたわけですか。

グアン:はい、武田グループの中に大きく4つのシステムがありました。標準化を進め、これらを1つにしていきたいと考えています。既にアメリカで2つを1つにまとめましたから、今は3つですね。いずれも独SAPの業務パッケージソフトを使っていますが、各地の業務プロセスが異なっているので、SAPを使っていても別のシステムなのです。

 早速、去年からプロジェクトを開始しました。ビジネスリエンジニアリングのプロジェクトです。武田の業務プロセスを見直し、一番良いプロセスを考え、ヨーロッパにあるシステムをアップグレードすることで業務をサポートしています。

 3つあるシステムを比べてみると、ヨーロッパが一番目標に近かったからです。これを武田のグローバルソリューションのコアにしていきます。業務プロセスとシステムの標準化が武田のグローバリゼーションに有用であると考えています。

 大事なのは、まず業務プロセスの改革に取り組むということです。仕事のやり方を変えないでシステムについてだけ標準化とグローバル化を進めようとすると、うまくいきません。過去に業務プロセスのことを考えずシステムを統合して失敗した企業がかなりあります。