遠藤紘一・内閣情報通信政策監(政府CIO)(右)と日高信彦・ガートナー ジャパン 代表取締役社長
遠藤紘一・内閣情報通信政策監(政府CIO)(右)と日高信彦・ガートナー ジャパン 代表取締役社長
(写真:深澤 明、以下同)

 内閣官房の初代政府CIO、遠藤紘一氏は「自分のエンジンを持ってほしい」と霞が関の府省庁に向かって2年間言い続けてきた。各省庁の担当者、CIO、CIO補佐官、民間の支援者といった関係者はどう変わってきたか。遠藤氏の後継者をどうするのか。ITリサーチ大手、ガートナー ジャパンの日高信彦社長が質問した。

(構成は谷島宣之=日経BPビジョナリー経営研究所研究員、中村建助=ITpro編集長)

日高:日本で初めて、政府CIOという役職に就かれて、色々な改革を進めてこられた(『わからないからわかるようにしてくれ』参照)。とはいえ、遠藤さんだけでは改革を進められない。一人ひとりに「自分のエンジンを持ってほしい」と仰っていましたが、結局は人に尽きるということでしょう。

遠藤:霞が関の情報システムの問題は何かと言ったら、ご指摘のとおり、人でした。業務とITのことがある程度分かって、発注者としてあるレベル以上のクオリティーを備えた仕様を決められ、価格の見積もりがそこそこできる。そういうメンバーが各省庁にほとんどいなかった。ITを上手に使っている企業にはそういう人たちがいます。

日高:必ずいます。

遠藤:そういう人がいないと何もできないし、問題を起こしかねないということは十分わかった。この2年間、私のところの事務局にいて、一緒にやってきた人が結構いるわけです。大分のみ込んできてくれている。

 最近では、私のところに案件が上がってくる前に、こちらと相手の事務局同士でかなりやり取りをしてくれています。面白いのは、向こうの事務局がここへ来る。うちの事務局もいる。その場で、私がいろいろ質問をすると、お互い、そこは聞いていなかったのか、と言い合う雰囲気になっている。

日高:自分たちでまず聞けということですね(笑)。

遠藤:そうしたら互いに「すみません」と言って「自分たちも打ち合わせをしたとき、気が付かなかった。すぐ調べましょう。一緒にやりましょう」という感じになっています。

日高:教育になりますね。各省庁にいるCIO補佐官も入ってくるのですか。

遠藤:補佐官も一緒にいます。

日高:なるほど、全体が遠藤グループというか、そういう感じになってくるといいですね。

遠藤:願わくば。とにかくできる人を増やす、それを実現しなければいけません。ただし、せっかく手伝ってくれた事務局の面々はすぐいなくなってしまうのですね。

 私がこの仕事を引き受ける際に、ぜひ守ってもらえないでしょうかという条件を出しました。2年で人をころころ替えるのは止めてほしいと。残念ながら、ほとんど2年で替わっています。このあたり実に厳格です。先日も菅(義偉)官房長官に会いにいって、5人か6人の名前を出して、大事な時期だからとにかく動かすのは待って欲しいと頼んできました。

日高:逆に言えば、遠藤さんの教え子が霞が関に広がっていくわけで、いいことじゃないですか。