人事異動はサラリーマンにとっては仕事の一部だ。中長期的な視点で見ればキャリアを積んでいくために必要な仕組みでもある。

 一方で短期的な視点である「担当者の交代」という観点では、いろいろと面倒な事が発生し得る。特に、ユーザーから信頼されている優秀なITエンジニアの交代は、ゴタゴタしやすい。

 ユーザーからすれば、お気に入りのITエンジニアの交代は避けてほしい。できるならば、ずっと担当してもらいたい。それでも多くのユーザーは「数年ごとの交代は企業社会では仕方のない」と割り切って受け入れている。

 だが、中には強引なユーザーもいる。「今の担当者を交代させるならば、契約を打ち切る」と脅かし、交代を阻止しようとする。この交代阻止が成功するケースがある。

 ユーザーとしては大喜びだろう。しかし、ITエンジニアにとってはどうだろうか?

 自分のことを高く評価してくれるユーザー企業に入れば、居心地は良いし、やりがいもある。その半面、同じユーザーと仕事を続けていると馴れ合いが出てくるし、自分が知らない新しいアーキテクチャーやテクノロジーに触れる機会を失う可能性もある。

 長く担当すればするほど、交代しにくくなる。実際に、ユーザーからずっと交代を拒否され、ITエンジニアもそれを受け入れて異例の長期間常駐を続けた人がいた。その結果、昇進のタイミングを逃し、同期入社が課長やプロジェクトマネジャーに昇格するのに現場担当者のまま据え置かれてしまった―。