神奈川県厚木市のセルタンは、ウレタン素材の座椅子やソファーといったインテリア製品のメーカーである。インターネット通販によって急成長しており、2014年の売上高は約20億円に上る見込み。主力は自社ブランド商品の「和楽の音色シリーズ」で、ネットショッピングモールではランキングの上位を占めるほど人気になっている。顧客の多様なニーズを素早くとらえ、矢継ぎ早に新商品を開発することによって、ユーザーから高い評価を得た。

 同社のIT経営を牽引しているのが、2代目経営者の八木美樹男氏(代表取締役社長)である。前述した「和楽の音色シリーズ」の開発やネット通販の実現を主導し、5年間でセルタンの売上高と収益性を大幅に改善させた(写真1、画面1)。

写真1●セルタン代表取締役社長の八木美樹男氏
写真1●セルタン代表取締役社長の八木美樹男氏
画面1●セルタンの直営ネット通販サイト「TAKAMINE」
画面1●セルタンの直営ネット通販サイト「TAKAMINE」
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 セルタンの成長は決して平坦な道のりではなかった。同社では、大手家具専門店やホームセンターといった量販店に、座椅子やソファーを委託生産で納入するビジネスを主体とする時代が長く続いていたが、2005年に最大の取引先から取引中止連絡を受け、売上高は大幅に減少する。自社ブランド商品の開発とネット通販はそうした状況で始まった。以下ではその経緯を説明しよう。

IT経営応援隊の支援により診断と戦略策定を実施

 セルタンのIT経営への取り組みは早かった。八木社長は1980年ごろからパソコンの高い業務処理能力を理解し、社内業務への適用を開始。1995年にはマイクロソフトのデータベース管理ソフト「Access」を使った自社システム「SAIT」を社長自ら開発している。目的は連絡・報告をはじめとする情報共有で、その後も同システムは拡張され、利用が続いている。

 SAITは社内連絡メール/日報/議事録など全社共通のプラットフォーム部分と、開発/生産/営業/海外生産・販売といった組織ごとの部分から成り、各種情報を効率的に共有できる(画面2、3)。手軽に導入できるパッケージソフトも検討したが、自社の日々変化する業務やきめ細かい顧客ニーズに対応する製品がなかったため、採用を断念したという。

画面2●自社開発システム「SAIT」のトップ画面
画面2●自社開発システム「SAIT」のトップ画面
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画面3●「SAIT」による商品開発状況の共有
画面3●「SAIT」による商品開発状況の共有
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