徳島県吉野川市に本社を置く阿波スピンドルは、精密機械部品であるスピンドル(写真1)の製造・販売を手掛けている。1868年(明治元年)の創業以来、世界の繊維産業とともに発展し、「AWAブランド」を確立。顧客の要請にきめ細かく応え、一体となって新技術の開発に取り組み、今では時代を先取る「モノづくり」集団として産業の発展に貢献している。

写真1●阿波スピンドルが手掛ける製品
写真1●阿波スピンドルが手掛ける製品
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写真2●代表取締役の木村雅彦氏
写真2●代表取締役の木村雅彦氏

 同社がIT経営に取り組むきっかけとなったのは、独立行政法人中小企業基盤整備機構の支援である。同機構は2008年10月、中小企業の情報化支援に向けて、「戦略的CIO育成支援事業」を実施。阿波スピンドルは同事業の支援企業第1号となった。その支援者となったのが、ITコーディネータ(ITC)の前田尚次氏だ。

 当時、政府や地方自治体では、情報化推進の責任者であるCIOの位置づけが明確になりつつあったが、中小企業ではCIOという言葉になじみすらなく、同社で特定の人材をCIOに任命するのは難しかった。そこで阿波スピンドルはCIOの人材育成に当たり、管理職でチームを編成。同社代表取締役の木村雅彦氏(写真2)がチーム会議などへ常に参加し、自ら詳細な部分までを確認しながら、CIOの人材育成に取り組んだ。

管理レベルは高いもののアンバランス

 CIO育成の一環として、阿波スピンドルの情報化への本格的な取り組みも始めた。既に同社は情報化を進め、業務管理/生産管理/財務/購買管理/営業管理といった社内システムを稼働させていたが、それぞれが別々に導入されていた。例えば、財務会計システムはPCAのパッケージで構築され、生産管理システムはオフコンによる独自開発で、購買管理システムはパソコンによる独自開発だった。

 体制的にも課題があった。情報化担当者は明示的に任命されず、各システムは管理職クラスの社員の個人的なスキルを基に運用されていた。経営管理に必要な各種実績情報は、個々のシステムから手作業でデータを抽出して報告書などを作成していた。月末締日翌日の1日には試算表ベースで先月の実績を把握できていたが、事務管理統括部門の管理レベルの高さと、不統一なシステムとのアンバランスさが際立っていた。