茨城県常総市で事業を営む山崎石材店は、延享四年(1747年)に創業し、270年の歴史を持つ老舗である。墓石関連が売り上げの9割を占めており、高品質なインド産石材を使用したデザイン墓石(写真1)が得意で、NHKなどのメディアでも取り上げられている。東日本大震災後、安全・安心に注力しており、地盤強化や免震対策といった耐震技術を積極的に取り入れた墓石を提供している。

写真1●デザイン墓石
写真1●デザイン墓石
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 同社の山崎哲男社長(写真2)は13代目経営者で、就任以来、積極的にITを活用してこの老舗石材店のビジネスモデルを見直し、経済産業省が実施した2016年「攻めのIT経営中小企業百選」に選定されている。ここでは山崎石材店の様々な取り組みのうち、主にCRM(顧客関係管理)システムについて、ITコーディネータ(ITC)の支援内容を含めて紹介しよう。

写真2●山崎哲男社長
写真2●山崎哲男社長
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超高齢化社会を迎えても縮小する石材業界

 山崎石材店の主力商品である墓石の市場は縮小を続けている。超高齢化社会を迎えたことで成長産業のように考えられているが、実際には2000年がピークだった。高齢化や核家族化で墓地や墓石が小規模になるとともに、墓石を使わない永代供養墓や樹木墓地などが広がっているためだ。

 一般に市場が縮小すると、業界の事業者は「勝ち組」と「負け組」に分かれ、最終的には地域一番店しか生き残れなくなる。昨今の墓石市場はピーク時の半分になっているほか、大手の葬儀社や仏壇店といった異業種・他地域の事業者の参入があり、「勝ち組」になるのは容易ではない。

 また、市場が成熟したことで、需要が質的に変化している。「お墓が今すぐ必要な顧客」が減り、「お墓をいつか建てたい顧客」を大事にしなければならなくなった。いつでも声をかけてくれるようロイヤルティーの高い顧客に育てていかなければならない。