今回登場していただくBさんは、外資系ブラック企業で受けたストレスからうつ病になり、6か月間療養したことがあるという。もうすぐ50歳。大学を卒業後、大手外資系IT企業に十数年勤務した後、中小の外資系IT企業数社を渡り歩き、現在は中規模の外資系IT企業で日本法人社長を務めている。

大手有名外資系からの転職

 私は大学卒業後、大手の外資系コンピュータ会社で働いていたのですが、三十歳台後半で転職しました。大手企業で歯車として働くことに、物足りなさや閉塞感を感じていました。それに、「鶏口となるも牛後となるなかれ」で、もっと自分の戦闘能力を鍛えて、将来は社長になろうと決めていたからです。

 今から十数年位前ですから、現在と比較してまだ大手は安定感があり、転職するかどうかずいぶん悩みました。安定とぬるま湯の動物園の中で毎日決まった餌をもらい安住するか、意を決して動物園の檻から出て野生のサバンナに飛び込み実力で沢山の獲物を捕えるか、なんて大げさに考えていましたよ。

 実は、私が在籍した大手外資系でもその後大規模なリストラがあり、同期もずいぶんリストラされたんです。同期の一人は、会社に大きく貢献して社長に可愛がられて、役員に就任しました。ところが、自分が引き継いだばかりの大規模プロジェクトに対して顧客が訴訟を起こして大問題となり、社長が外国人に交代したとたん責任を取る形でクビになったんですよ。

 一昔前なら、役員まで行けばグループ子会社の社長や役員になるなどのコースもあったのですが、今はその企業グループ全体のビジネスが低迷しているし、前任者がポストにしがみついてなかなか辞めない。それで、「今までの貢献に対する温情も何もなく、いきなり放り出された」と言っていました。

 外国人を社長に就任させたのも、日本人同士の感情的なしがらみを切り捨てて、リストラを推進するという目的だったようです。

 50歳近くになると、いくら有名大手の役員をやっていても、何か特別なものを持っていないと、よいポストに転職するのは難しいですよね。50歳という年齢は、人材としてはもう賞味期限切れなんです。

 彼は英語が達者ではなかったので、外資系の社長ポストには就けなかったようです。その後、どうにか日本企業の中間マネジメントポジションで再就職できたと聞き安心しました。ですが、相当なランクダウンです。

 こういう話を聞くと、あの時会社を辞めた決断は、英断だったと思っています。40歳前は、転職できるギリギリの年代ですから。

 この十数年で、IT業界の状況は大きく変わりました。大手によりかかっていれば安泰とか、将来的にも安定、なんていう保障は全くなくなりました。やはり、自分自身の戦闘能力を磨き、自分で獲物を捕えて生きていくというようなサバイバル能力を上げていくしか、生きていく道はないと思いますね。

 最近、その大手外資系IT企業が業績悪化のため、全世界で約10万人をリストラするというニュースが流れていました。日本でもこれから大規模なリストラがあると思います。本当に、一寸先は闇ですね。