NTT東日本と飯田ケーブルテレビは、光コラボレーションモデルによるケーブルテレビ提供エリア全域の光化を進めることで合意したと2015年10月20日に発表した。飯田ケーブルテレビは、NTT東日本の光アクセスサービスを使って、ケーブルテレビ放送を提供する。既存の同軸ケーブルによる放送からFTTHによる放送に早期切り替えが可能となる。BS放送はパススルーで提供することも可能になる。利用者は、光回線のみでテレビ、電話、インターネットなどが利用できるようになる。ケーブルテレビ提供エリア全域の光化は初の事例であり、NTT東日本は他のケーブルテレビ事業者にも提案していく方針。

光コラボ回線+VCASTを活用

 NTT東日本によると、今回のような協業モデルは、下から「NTT東日本の光アクセス回線(FTTH)」「NTT東日本の映像伝送サービス(VCAST、光波長多重による伝送サービス)」「ケーブルテレビによる放送」の3層構造になる。このうち、FTTH回線については、光コラボレーションモデルに基づき、NTT東日本がケーブルテレビ事業者に対して卸提供する。利用者は、「(1)ケーブルテレビ事業者のみとの契約で回線を含むトータルなサービス提供を受ける」「(2)NTT東日本とフレッツ光の利用契約を結んだうえで、ケーブルテレビ事業者と放送サービスの契約を結び利用する」という二つの選択肢が利用できる。

 NTT東日本にとってVCASTを使ったケーブルテレビとの協業は、過去にも事例はあった。ただし、サービスの提供形態は、「NTT東日本のフレッツ光」と「ケーブルテレビの放送サービス」の組み合わせだった。今回は、「地域に最も近い存在であるケーブルテレビ事業者が放送と通信サービスをまとめて提供できる。通信があるからこそのサービスをケーブルテレビ事業者が追加していけるので、通信に付随した地域創生に向けた各種サービスをケーブルテレビ事業者自らがより広く提供していける」(ビジネス開発本部第二部門 映像サービス担当の滝澤暢担当部長)というのが大きな違いという。

 また従来はケーブルテレビのエリア拡張のツールだった。今回のように提供エリア全域の光化は初めてのケースとなる。光コラボによるケーブルテレビ事業者との協業はこれまでにNTT東日本だけで16社ほど事例があったが、インターネット接続サービスの提供に向けたものだった。光コラボ回線とVCASTを用いて既存設備を更改することを決めた事業者としても今回が初めてである。

 NTT東日本としては、4K/8K時代を見据えてインフラ更改を検討しているケーブルテレビ事業者に対して、「光コラボをベースにVCASTを使った放送の次世代化の検討を呼びかけていく」(ビジネス開発本部第四部門 コラボレーション推進担当の高山不二夫担当課長)という方針だ。長期的にはインフラすべてをNTT東日本の光回線に置き換えるという提案だ。「街の中に光回線が二重に張り巡らせるより、多くのケースでコストメリットが出る」「浮いた予算を活用して、地域活性化に向けたサービスの提供や、周辺へのエリア拡大を一緒に検討していかないか」という提案を各ケーブルテレビ事業者に行っていく。

 ケーブルテレビ事業者にとって、現在主流のHFCの次世代インフラ候補として、「自前でFTTH回線敷設」「HFC+に移行」などいくつか選択肢がある。こうした中で、「ケーブルテレビ事業者各社の経営環境に合わせて、VCASTも検討してもらえるように、しっかりと情報を出していきたい」(滝澤担当部長)とした。