日本ケーブルテレビ連盟は、業界を挙げて無線の利活用の推進に向けた検討を進めている。具体的には、連盟内の「新サービス・プラットフォーム推進特別委員会」の傘下に「無線利活用WG」を2014年6月に発足し、MVNOや地域BWA、無線LAN(Wi-Fi)をケーブルテレビがどう活用していくのか、検討を進めている。地域BWAについては2014年5月16日に、「ケーブルテレビ地域BWA推進プロジェクト」を実施すると発表したところである。また、MVNOについては2014年10月14日に、IIJと同事業で協業し、全国のケーブルテレビ事業者に向けてMVNOプラットフォームを提供し、ケーブルテレビ事業者による低価格スマホサービスの展開を支援していくことになったと発表した。日本ケーブルテレビ連盟の西條温理事長に、取り組みの背景や現状などを聞いた。

(聞き手は本誌編集長、田中正晴)

無線の取り組みについて聞きたい。

日本ケーブルテレビ連盟 理事長 西條 温氏
日本ケーブルテレビ連盟 理事長 西條 温氏
1965年住友商事入社。2001年同社専務取締役兼米国住友商事会社社長、02年住友商事取締役副社長、09年日本ケーブルテレビ連盟顧問、10年6月より現職。
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西條 我々は有線から出発し、放送に加えて通信関連の様々なサービスを追加してきた。しかし、世の中が無線中心に変わろうとしており、業界としても取り組みの強化が急がれることとなった。国策としてWi-Fi環境の整備が進められているが、ケーブルテレビ業界としてもケーブルWi-Fiの強化が必要になるだろう。地域WiMAXは、ステージを変えて地域BWAに変わり、その用途はもっと広がるはずだ。

 地域BWAについてよくビジネスモデルは成立するのか、と聞かれる。たしかに、地域の公共無線だけでは難しいかもしれない。しかし、ケーブルテレビはコミュニティチャンネルを提供しており、これに地域の防災・防犯、安心・安全を確保するための無線が加わると、トータルとしての産業維持という点では非常に意味を持つことになる。

 我々は、電話もインターネットも自前の設備を用意して提供してきた。モバイルもケーブルテレビが独自の世界で提供できると、地域の人たちに与える安心感が異なる。

 あと、これはあくまで個人的な予測だが、いまは有線で行われているラストワンマイルの接続が、いずれ無線に置き換わる可能性もある。必要になってから対応すればいいという見方もあるだろうが、周波数は常に足らない。せっかく地域に割り当てられた周波数は大事にする必要がある。

 こうしたもろもろの考え方は、業界にもかなり浸透してきた。2.5GHz帯については、現在地域WiMAXの免許を取得しているのが46社にとどまり、しかも実際に事業を開始したのは30社だった。しかし、地域BWAについては、最新の連盟による調査で74社が参入の意向を示した。「関心がある」ではなく「参入する」と回答を得たということだ。