2015年に会社を立ち上げたHAROiDは、新たな取り組みを続々とスタートさせている。例えば、テレビの共通ポイントサービス「CHARiN」の提供を2016年7月に開始した。また、総務省公募の「IoTサービス創出支援事業」では、同社が代表提案者の「テレビのIoT化とオーディエンスデータ連携による地域経済活性化実証プロジェクト」が採択された。こうしたプロジェクトの狙いや進捗を、代表取締役社長の安藤聖泰氏や、プロジェクトを担当する田中謙一郎氏(取締役副社長)、吉澤健吾氏(ビジネス開発マネージャー)に聞いた。(聞き手は本誌編集長、田中正晴)

テレビのIoT化を推進し「テレビをインターネットの力でアップグレードする」をコンセプトに掲げ、テレビの共通ポイントサービス「CHARiN」の提供を7月30日にスタートさせた。番組単位のポイントサービスは一部始まっている中で、CHARiNが目指す世界感は。

安藤 視聴者のテレビの見方は、テレビ局単位ではなく、○×番組がいいという具合に番組単位でチャンネルを合わせるというのが一般的だ。このためテレビの物事の進め方も、番組単位で行われてきたのは自然な流れであり、ポイントサービスも番組単位で一部、スタートしている。

 一方で、世の中の共通ポイント化の潮流が示す通り、一つのポイントにまとまって好きな番組を今まで以上に楽しんだりできるほうが、利用者側の管理コストは軽減され、ユーザビリティ向上につながることは言うまでもない。番組単位の個別のスタンプラリーやポイントサービスも効果を上げている。これは、リアルな店舗で例えると商店街の各店が自分の店舗のスタンプカードを用意しているような状況だ。一方でTポイントやPontaなどに統一した方が、利用者側に求められた管理コストが軽減され、ユーザビリティ向上につながる。すべてのサービスはユーザビリティに最適化されるはずなので、いずれはいろいろな番組で取り組まれているポイントサービスが共通化されていくという流れが来ると考えている。そこで、先行してプラットフォームを当社が用意することにした。

 現在、金融・流通・交通・通信・電力などの各業界のプレーヤーがポイントサービスに参画しているが、利用者と長期的な関係を築いていくことが求められていることが大きいと思う。このことは、これからの放送にとっても同様に重要なテーマだろう。そこでHAROiDは、番組を横断し、局を横断し、もしかしたら動画配信まで含めてサービスを横断して貯めていけるような新しい仕組みを、テレビ局や視聴者にとっても使いやすい形で用意していきたいと考えている。

業界横断の共通化ができれば、BtoBの部分でも強みを発揮できるのでは。

吉澤 先行する共通ポイントには、様々な業種が参加して陣営を形成している。我々は後発になるが、放送がまとまってバリューを出していくことは、多くのプレーヤーとの協業を進めるためにもメリットがあるだろう。

共通ポイントの原資の考え方は。

吉澤 理論上、エコシステムは成立するように考えている。発行する各お店にとって、つまりは番組あるいは放送局にとっては、新規の利用者獲得や、リテンション(顧客維持)あるいはロイヤルティ(商品・サービスへの愛着)、ユーザー化などのメリットを享受でき、そのためのコストと見なせるような形を作っていきたい。放送局はこのサービスを利用することで、どういう人が番組に参加しているのかが見えるようになり、共通ポイントに参加するテレビ番組もポイントを通じて視聴者につながれるだろう。視聴者にとっては、テレビを視聴したり企画に参加することで共通ポイントを得られるので、その行動も変わってくるかもしれない。テレビのIoT化を推進することで、「視聴者」を「ユーザー」に変えていきたい。

技術面でテレビならではの難しさはあるのか。

吉澤 番組で企画参加を呼びかけ、参加者にポイントを配布するといった場合に、瞬間的に集中的なアクセスに対するスケーラブルな対応が必要になる。当社はもともと番組連動企画などでこうした処理のノウハウがある。十分なセキュリティを確保したうえで、集中するトラヒックをさばき公正にポイントを付与するようなノウハウを持つ事業者はほかにはいないのではないか。

CHARiNの今後の取り組みは。

安藤 ポイントの使い先をより充実させていきたい。また、テレビと連携している我々ならではのいろいろなサービスにチャレンジしたい。

8月にスタートしたキャンペーンでは、テレビに接続するだけで1万ポイントを付与している。ポイントの価値の考え方は。

安藤 テレビは様々なシーンで大量にポイントを配ることが想定される。中々もらえないよりは、利用者がちょこちょこともらえるように、ポイントを配りやすくしておいた方がいいとは思っている。