ケイ・オプティコムは、ネットワークを自己設置し、NTTグループに対してFTTHの分野で設備競争を挑んでいる。サービス競争を重視するという流れの中で、接続政策委員会においても設備競争の重要性を訴え続けた。モバイル分野の寡占的協調こそ課題と以前から訴えている同社藤野社長に、最近の競争政策の議論がどう見えているのか、その影響などを聞いた。

(聞き手は本誌編集長、田中正晴)

接続政策委員会の議論がいったん終了した。御社の考え方は。

ケイ・オプティコム  代表取締役社長 藤野 隆雄氏
ケイ・オプティコム 代表取締役社長 藤野 隆雄氏
1949年生まれ。73年関西電力入社。2007年関西電力常務取締役 経営改革・IT本部長、09年6月より現職。
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藤野 企業会計の償却方法と接続料金の決め方は、本来まったく次元の違う話だ。NTTが会計基準を変えるのはもちろん自由だ。確かに原価算入において償却をどう計算するかで原価が変わるのも事実。しかし、企業会計を変えるからといって、原価計算の方法を変える必然性はない。しかも、その結果、接続料金が激変するのはいかがなものだろうか。

 NTT東西が所有する設備は、ボトルネック設備である。そのボトルネック設備の料金が恣意的に変えられるというのは、競合事業者の事業安定性に与える影響が非常に大きくなる。我々は、コストを投じリスクを背負って独自に設備を設置し、設備競争を実現している。そこへの配慮もなく、「単に安ければいい」という議論にはしてほしくない。原価に照らして適性であるのか、あるいはどこかにつけを回さずに公平であるのかが最も重要なことだ。

 そのうえで、事業の安定性を考慮してほしい。本来、適性に原価を織り込んでいたら、急激に値段が下がるはずがない。接続料の値下げに反対しているわけではない。我々もコストを下げる努力は行っている。徐々に下がるのであれば、キャッチアップできる。ところが、NTT東西の提案通りに急激に下がると、事業の安定性が大きく阻害される。激変緩和措置が検討されるべきだ。