パナソニックは、「ケーブル技術ショー 2014」において、4Kやリモート視聴などの新機能を備えたSTBの試作品を出展した。ザッピングポータルやターゲット広告、ケーブルテレビ局に向けた新しいビジネスの提案も活発に行っている。視聴情報を活用して観たい番組を提供する「ケーブルアワー」広域トライアルの提案も行った。こうしたケーブルテレビ向けSTBビジネスの指揮をとる安藤氏に、ケーブルテレビビジネスの可能性や、今後の方向について聞いた。

(聞き手は本誌編集長、田中正晴)

今回のケーブル技術ショーの展示では、ザッピングポータルおよび、そのうえでのターゲット広告のデモがあり、注目を集めた。

パナソニックAVCネットワークス社 STBネットワークビジネスユニット ビジネスユニット長 理事 安藤 誠氏
パナソニックAVCネットワークス社 STBネットワークビジネスユニット ビジネスユニット長 理事 安藤 誠氏
1982年に松下電器産業(現パナソニック)入社、中央研究所・情報グループ。97年にAVCネットワークス社AVC商品開発研究所など経て2011年にAVCネットワークス社ネットワークシステム事業グループSTBネットワークビジネスユニット ビジネスユニット長。14年4月から現職。

安藤 ターゲット広告は、国内外のネット系広告会社と一緒にトライアルを進めている。その会社によると、スマホ/タブレットやパソコンによる動画広告に対して、今回出しているようなザッピングポータルでのクリック率は、我々の国内の実験で数倍から10倍くらい高いという結果が出ている。このため、ケーブルテレビは非常に興味深いマーケットだという感想をいただいている。非常にポテンシャルの高いビジネスだと我々も期待している。

 確かにスマホなどは普及台数が多い。しかし動画再生しても簡単にスキップされる。テレビの画面だと、結構広告も見てもらえる可能性もありそうだ。

テレビの場合は、ブランド浸透に向けた偶然接触型で展開するという考え方もあるが。

安藤 我々は、あくまでターゲット広告による新しいビジネスの創出を狙っている。既存のテレビ・広告産業が扱ういわゆるメディア広告費は国内で1兆7000億円あるといわれているが、それを大手広告代理店と奪い合うものではない。それとは別に、販売促進費が国内で3兆円程度あると言われており、これをケーブルテレビというメディアで扱っていきたいという狙いだ。

ケーブルテレビ加入世帯の多くが利用しているSTBには双方向機能が備わっており、ターゲット広告の展開にそもそも向いている。

安藤 ケーブルテレビは800万世帯の優良顧客をかかえ、地域の信頼も高い。ここに我々も提供しているSTBから得られるライフログの情報を掛け算できれば新たな価値を創出できるのではないか。

 例えばメタデータと視聴ログを組み合わせることで、利用者の嗜好が把握できる。これ自体も有用だが、さらに嗜好の相関関係を調べていくと、例えば医療と不動産は結構相関関係があることがわかる。すると、不動産に興味がある一方で、医療にはそれほど大きな興味がない層は、医療に対する関心に自身が気付いていないだけで潜在需要があると類推できる。つまり「気付き」を提供できるというわけだ。