日本ケーブルテレビ連盟は、ケーブル・プラットフォーム構想の下、業界ID連携基盤を構築し、同基盤を使った様々なサービスを実現すべく準備を進めている。ケーブルテレビ業界を挙げた共通IDを運用することで、ケーブルインフラの土管化を避けて、サービスプロバイダーと連携しケーブル各局の収益拡大を図ろうという考え方である。連盟の新サービスプラットフォーム推進特別委員会 ID連携利活用WG主査である塩冶憲司氏(シー・ティー・ワイ代表取締役社長)に、ID連携に取り組む背景などを聞いた。

(聞き手は本誌編集長、田中正晴)

塩冶 憲司 氏 (シー・ティー・ワイ代表取締役社長)
塩冶 憲司 氏 (シー・ティー・ワイ代表取締役社長)
日本ケーブルテレビ連盟 新サービス・プラットフォーム推進特別委員会 ID連携利活用WG主査

ケーブルプラットフォームが目指すものとは。

塩冶 これまでケーブルテレビ業界は、回線を独自に敷設し、その上で放送あるいは映像系サービスやインターネット、電話といったサービスを提供し、最近はモバイル通信サービスをビジネスモデルに加えてきた。ネットやモバイル通信の利用者は、たくさんある外部のサービスプロバイダーに毎日接続し、ネットショッピングやゲーム、動画閲覧などに利用している。無料サービスだけでなく、有料系の映像サービスやショッピングといったEC系サービスなどの利用も急速に伸びている。経済産業省の資料によると2014年のB2C-EC(企業と消費者間の電子商取引)は13兆円規模と成長を続けており、ケーブルテレビ経由のトラヒックに由来する金額も相当な割合を占めると考えられる。国内最大規模の「サービスプロバイダーへのインフラ」を提供しているケーブル業界として、その接続・利用から生まれるビジネスの一部を担うことができれば業界にとって大きな利益につながるだろうし、できなければ土管化してしまう危機感もある。

 業界を挙げて積極的に取り組むことで現状のケーブルテレビ業界の売上高である1兆円を大きく上回る可能性があり、これからの業界の成長を拡大させることができる可能性が大きい。ケーブル業界の一体的な取り組みが利用者や関係事業者の信頼感につながり、ケーブル各局の利益につながると期待している。無線インフラを含めケーブル局が将来に向けた投資を進めるうえでも、こうした新たな収入源の確保は重要な課題だ。

この中でID連携の役割は。

塩冶 具体的には、利用者がケーブルテレビのインターネット回線を使って外部のサービスプロバイダーを利用することでケーブル事業者側に、レベニューシェア、アフィリエイトなどの売上が確保できる仕組みを「ケーブルID連携」により実現できると期待している。

 我々の業界は、これまで引き込み線単位で、つまり世帯単位で顧客管理してきた。ところがインフラを持たないサービスプロバイダーにとっては、そこに誰が住んでいるのかの方が重要である。ID連携は、業界全体でこの需要に応えていこうという話でもある。今後の様々なサービス提供において個人単位の対応を行っていく必要があり、このシステムの実現を目指す。

 この話はケーブル業界側の勝手な思惑ということではなく、利用者やサービスプロバイダーにとっても利便性の良いものになるだろう。例えば利用者はネットで買いものをする場合に、ケーブルIDと連携することで氏名、生年月日、住所などの情報入力といった煩わしい作業が省ける。サービスプロバイダー側にとっても我々と組みデフォルトでこうした使い勝手が提供されることは大きなメリットであり、売上拡大に貢献できると考えている。