スカパーJSATは、海外有力放送局の無料ライブストリーミングを集約しスマートフォンやタブレットで利用可能なアプリ「Portable News」の提供を2018年1月に開始した。増え続ける外国人旅行者が日本滞在中も自国に関する情報や出来事を母国語で簡単に視聴したいという需要が伸びると予測し、同アプリの準備を進めてきた。自然災害発生時に訪日外国人が災害情報から孤立しないように多言語による災害情報の受信機能の搭載も開始した。母国語でニュースにアクセスでき、いざという場合も多言語で災害情報を受信できるようにすることで、安心・安全に日本を旅行するのに役立つ環境を提供する。同サービスやアプリの開発に携わってきたスカパーJSAT メディア事業部門の森元光一氏(取材時は事業戦略室 新規事業推進部 OTTコンテンツ担当主幹、7月1日付でLIFEビジネスセンター LIFE事業部 OTTコンテンツ担当主幹として引き続き担当)と小島有星氏(取材時は事業戦略室 新規事業推進部、現フジテレビジョン)に開発の経緯や狙い、今後の展開を聞いた。

(聞き手は本誌シニアエディター=田中 正晴)

森元光一氏(右)と小島有星氏
森元光一氏(右)と小島有星氏

アプリの開発のキッカケは。

森元  2016年度の頃から「新規事業に取り組んでいく」ことを会社の方針として打ち出し、社内でアイデアの公募を行ったりしたところ、インバウンドが一つのテーマに上がり、検討を進めることにした。検討の中で、多チャンネルサービスを展開しているスカパー!として提供できていない外国語によるニュースチャンネルを利用できるアプリやサイトがあれば、訪日外国人の方々にとって便利ではないかと考えて、プロジェクトをスタートさせた。

 これまでも、こうしたチャンネルの事業者からスカパー!のプラットフォーム上で展開したいという相談は様々な形であった。しかし放送の場合は、ターゲットとする利用者の数、コストなどのハードルがあり、なかなか実現してこなかった。そうした中で、まずネットを使った配信からスタートすることが、現実的ではないかという仮定で動き出した。

 もちろん、参加していただいたチャンネルの多くは、既にオフィシャルのWebサイトなどにてストリーミング形式でニュース番組のライブ配信を行っている。そうした中にあっても、日本に旅行に来ている間に、デバイスフリー、ロケーションフリーで自国の人が自分の国のニュースを視聴できる環境を作りたいという趣旨に賛同をいただいた。結果として、スカパー!ならではの特徴あるアプリをリリースできた。

防災機能が追加された経緯は。

[画像のクリックで拡大表示]

森元  このサービスにもっと付加価値をつけるには何が必要か、どうすれば訪日外国人の方に喜ばれるのかを議論したとき、多言語による防災情報の提供が一つの候補として上がってきた。わが社の別の部署が参加していた一般社団法人の「ゲートウェイ・アップ・ジャパン(GAJa)」がそうした情報の発信に取り組んでいると聞き相談、GAJaのアドバイスを受けながら実装に取り組んできた。

小島  あらかじめ設定した言語に従い、気象庁が発信する緊急地震速報、津波警報、気象特別警報、噴火速報の4種類の情報を、Portable Newsがインストールされている端末にプッシュ通知する。緊急地震速報は詳細画面に飛ぶことが可能で、震源地や各地の震度などの情報も表示できる。また、プッシュ通知で受け取った情報は、アプリの中にストックされるため、過去の情報を閲覧することも可能である。言語は、英語、中国語(繁体・簡体)、韓国語で通知可能。いまは、表示の最適化など調整を進めているところだ。