家の中の各種装置・機器と、手持ちのスマートデバイスを相互に連携させて多様なIoTサービスを展開する動きが様々な形で具体化している。中でも先行したのが、東急沿線でケーブルテレビ事業を展開するイッツ・コミュニケーションズ(イッツコム)の「インテリジェントホーム」である。2015年2月1日にサービスが始まった。各種センサーやカメラ、電子鍵、家電コントローラーなどを組み合わせて、ユーザー自身が決めたシナリオに基づいて動作させることができる。

 たとえば、「平日の子供の帰宅時間に合わせ、玄関のドアが開いたらカメラで撮影して、設定したアドレスにメールを配信」「朝の出勤時、ドアを施錠するとエアコンや照明をOFFにする」といったシナリオ設定が簡単にできる。外出先からのリモート操作や状況確認ももちろん可能だ。2017年5月には、インテリジェントホームが国内で初めて「IFTTT」にチャンネル登録、世界400以上のWebサービスやアプリ、IoTデバイスとインテリジェントホームの連携を可能にし、サービスの幅が一段と広がった。

 イッツコム執行役員事業戦略本部長(Connected Design代表取締役社長)の武田浩治氏に、改めてインテリジェントホームの戦略を聞いた。

(聞き手=本誌編集長、田中正晴)

「インテリジェントホーム」という名称で、ホームIoTの分野にいち早く参入した。

イッツ・コミュニケーションズ執行役員事業戦略本部長の武田浩治氏。Connected Design代表取締役社長に2017年6月に就任した
イッツ・コミュニケーションズ執行役員事業戦略本部長の武田浩治氏。Connected Design代表取締役社長に2017年6月に就任した

武田 スマートホームというジャンルは、基本的にサービスを利用する方々と一緒に発展していくビジネスだと考えている。私がよく例えるのはスマホの世界だ。スマホも当初アプリの数やできることは限られていたが、次第にできることが増えて、できることの質が高まり、アプリ間連携も進み便利になってきた。そして、先行して取り組んだ企業は、OSを普及させることに成功した。

 この発想でいえば、我々はプラットフォームという言い方をしているが、サービスをいち早く利用者に届けてスマート分野を体験してもらいその声をフィードバックしてもらうことで、利用者と一緒にサービスを育てたいと考えている。

 このことを大前提に、スマートサービスをいち早く利用者に届けたいと考えたとき、当時にとりうる選択肢をリサーチし、米Icontrol Networks(現在は、Icontrol技術の採用企業であり米国最大のMSOでもあるComcastが買収)と組むこととした。米国のトップスリーの大手ケーブルテレビ会社や、米国トップのセキュリティ会社が採用するなど、セキュリティ面や運用面で信頼ができた。そして何より、あらゆるメーカーの商品をつなげていくポリシーを掲げるなど、オープンな戦略を採っていたことが我々にとって魅力だった。

東急グループとして、富士通グループのニフティ(現在の富士通クラウドテクノロジーズ)と組み、Connected Designを設立し、スマートライフ分野におけるIoTサービス用ハードウエア・ソフトウエアの企画開発を進めている。

武田 東急グループだけでホームIoTの世界を作るつもりはない。このポリシーに基づいて、富士通グループを組んで、合弁会社を立ち上げた。同様に、インテリジェントホームのサービス拡張のために、様々な企業と、サービスやソフトウエア、販売チャンネルという形で連携していくことについてウエルカムだ。

どういう使われ方をしているのか。

武田 高齢者の見守りサービスとして利用されることが多い。子供の帰宅の様子を見守るという使い方もされている。利用者のニーズに応じてシナリオを設定して使ってもらえるので用途は様々だ。あと、BtoBの分野では、例えば時限式の鍵を発行できるという特徴を生かして、民泊の分野で引き合いが多く、事業を積極的に進めている。